サニブラウン 雨でも自己ベスト10秒05 戦国の男子100Mを統一

 「陸上・日本選手権」(24日、ヤンマースタジアム長居)

 男子100メートル決勝が行われ、史上初めて自己ベスト10秒0台の選手が5人そろった一戦は、15年世界ユース選手権2冠のサニブラウン・ハキーム(18)=東京陸協=が予選、準決勝で出した自己ベストを0秒01上回り、2002年・朝原宣治に並ぶ大会タイ記録の10秒05をマークし、初優勝。8月のロンドン世界選手権代表に内定した。2位の多田修平(20)=関学大、3位のケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=は代表入りが確実。リオデジャネイロ五輪男子400メートル銀メダルメンバーの桐生祥秀(21)=東洋大、山県亮太(25)=セイコーホールディングス=は個人種目での代表入りを逃した。

 日本短距離界の勢力図は、覚醒した18歳の“怪物”によってあっさりと塗り替えられた。レース中盤、先に抜け出した多田を、内からひときわ大きなストライドでサニブラウンが猛追。雨粒を切り裂き、豪快に突き抜けて、日本人最速決戦にケリをつけると、ゴール後は涼しげな表情でどよめく会場を見渡した。

 世界選手権参加標準突破者5人で3枠を争うサバイバルレース。それでも、唯一、緊張とは無縁だった。「ワクワクが止まらなかった」。左太ももを痛め、リオ五輪を断念したのが1年前。待ちに待った舞台に心は躍った。雨という悪条件に、極限の緊張感で各選手が予選、準決勝より軒並みタイムを落とす中、前日にマークした自己ベストをさらに0秒01短縮。日本陸連の伊東浩司強化委員長に「晴れた条件なら9秒台が出ていた。カール・ルイスやボルトのように60、70メートルまでメンタルを安定させて走れるのが強み」と、舌を巻かせる底知れぬポテンシャルを見せつけた。

 本当は100メートルで世界を狙うつもりはなかった。大会前の参加標準記録突破は200メートルだけ。100メートル自己ベストは10秒18で、蚊帳の外。「正直、100でタイムが出るとは…」。しかし、予選をいきなり日本歴代6位の10秒06で駆け抜け「ドーンと出て、リズムをつかんだ」。3月に高校を卒業し、3カ月。今秋のフロリダ大進学前の時間を利用したオランダ、南アフリカ、米国と異国の地での武者修行を経て、肉体も技術も自らの想定を超える成長を遂げていた。

 日本という枠にとらわれていないからこそ、無限の可能性を感じさせる。米国の大学への進学を選んだのも「将来を見据えて、誰も行っていない道を行きたかったから」。日本人の悲願である9秒台についても「出る時は出るんじゃないですかね。その時がくれば」と、こだわりはない。

 8月の世界選手権は、“人類最速の男”ウサイン・ボルトにとって、現役最後の大会だが「背中を追いかけるだけじゃなく、横に並んで走りたい」と、不敵に言ってのけた。16歳で出場し、大会史上最年少で200メートルの準決勝に進出した15年世界選手権から2年。世界規格の進化を見せつける舞台がやってくる。

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