羽生 闘志着火の銀 コーチも怒鳴る予定変更でミス帳消し!フリーはトップ
「フィギュアスケート・四大陸選手権」(19日、江陵)
来年の平昌五輪のテスト大会を兼ねて行われ、男子でショートプログラム(SP)3位の羽生結弦(22)=ANA=はフリーで3種類4度の4回転ジャンプを決めて1位となったが、合計303・71点で2位にとどまった。4種類5度の4回転を着氷させた17歳の全米王者、SP1位のネーサン・チェンが307・46点で初優勝した。国際スケート連盟によると、5度の4回転着氷は国際大会で初。SP2位の宇野昌磨(19)=中京大=は3位。田中刑事(22)=倉敷芸術科学大=は13位だった。
自分の立ち位置はここじゃない。羽生の心は、幕を開けた4回転戦争に向けられた。自身初めて4度の4回転ジャンプを成功させ、今季自己ベストの303・71点をたたき出した。
それでも、直後の演技で5度の4回転を着氷させたチェンに屈して2位。ハイレベルな戦いに敗れ、湧いてきたのは「スケートをやっていて、この時代に生まれてよかった」という感情だった。
SP3位から、五輪王者が真骨頂を見せたのは演技後半の対応力。フリーで今季成功のない4回転サルコー-3回転トーループの連続ジャンプで、2回転サルコー-1回転ループになった瞬間から、最善策へと切り換えた。
トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)からの連続ジャンプを、4回転トーループの連続ジャンプに変更。最後の3回転ルッツをトリプルアクセルに変えた。練習でも経験がなく、オーサーコーチは「お前、何やっているんだ!!」と怒鳴ったほどだが、全ては計算通り。予定とは違ったが、4度の大技にこだわり、得点を見た羽生はバンザイ。ミスをカバーし、今季自己最高得点をマークした。
メダルの色は銀だった。昨年末の全日本選手権をインフルエンザで欠場し、2カ月ぶりとなった今大会。最近も風邪気味だったが、実戦での対応力の高さを見せ「楽しかった」と素直な思いを口にした。
一方で「ジャンプにこれだけ集中する試合は、なかなかない。それほど、ネーサン選手の4回転の確率の高さは怖さを感じた」とも言った。5歳年下の新星に敗れたが、五輪王者は「その中でも常にトップを張りたい」と闘争心をたぎらせた。
リベンジの舞台は、五輪の国別出場枠がかかる3月の世界選手権(ヘルシンキ)。ソチ五輪のプレ大会だったグランプリファイナルも銀メダルだっただけに「ゲン担ぎとしてはいい」と笑う余裕もある。「自分の演技は完成し切れていない」。メラメラと燃える闘志が、羽生をさらに強くする。