アラフォー・スプリンターの挑戦 「五輪コラム」

 スーパースターのウサイン・ボルト(ジャマイカ)の登場で注目を集めた陸上男子100メートル予選で、40歳の元世界王者キム・コリンズ(セントクリストファー・ネビス)が苦しみながらも予選を通過した。今季、9秒台をマークしている「アラフォー・スプリンター」は10秒18の3組4着にとどまったが、タイムで救われて準決勝へ進んだ。

 ▽史上初の40代9秒台

 4月に40歳を迎えたコリンズは5月29日、ドイツで開かれた競技会で9秒93の自己最高をマークし、40歳以上としては史上初めてとなる9秒台スプリンターとなった。これまでの40歳以上の世界最高タイムは10秒29だったから、大幅な記録更新だった。

 ところが好事魔多し。6月上旬のレースで太もも裏を痛め、復調した7月22日のダイヤモンド・リーグ英国大会で再発させた。五輪の本番には間に合わせたものの、シーズン序盤の好調さにはほど遠いコンディション。得意のスタートでやや出遅れ、中盤でも伸びを欠いたが、持ち前のしぶとさで予選突破を果たした。

 五輪初出場は20年前のアトランタ大会。シドニー大会7位、アテネ大会6位と連続入賞を果たし、世界選手権では2001年エドモントン大会200メートルで銅メダルを獲得した。本命不在だった03年パリ大会100メートルでは接戦を制して初優勝し、母国へ初の世界選手権金メダルをもたらした。

 05年ヘルシンキ大会でも銅メダルに輝いたが、09年ベルリン大会で予選敗退となり、いったんは引退を表明。ところが2年後にはカムバックを果たし、35歳だった韓国・大邱大会ではボルトのフライング失格騒動後のレースで再び銅メダルを獲得した。

 ▽準決勝に注目

 前回のロンドン五輪開会式ではアテネ大会に次いで母国の旗手を任されたが、同国陸連とぶつかって100メートルを欠場。出場予定だった200メートルとリレーの代表から外されるトラブルがあった。翌年はその怒りをぶつけるように11年ぶりに自己記録を更新する9秒97をマークし、92年バルセロナ五輪金メダリストのリンフォード・クリスティ(英国)が持つ35歳以上の世界最高タイムに並んだ。

 スプリンターとしては細身の175センチ、64キロの体格。「しっかり身体をケアして十分に休養をとり、バランスの良い栄養を摂取すること」が長続きの秘けつと明かすコリンズ。コロンブスが発見したカリブ海の島国には「キム・コリンズ・ハイウエー」と命名された道路がある。母国の英雄が出場する準決勝には5万人余りの国民の目が注がれる。

(船原勝英)

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