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社長挨拶

 2020年4月、新入社員を迎えたデイリースポーツの門出がこうなるとは、だれにも予測できませんでした。本来なら神戸本社に同期生が顔をそろえて入社式をします。本年は新入社員も幹部も神戸本社と東京本部に分かれ、テレビ回線をつないでの入社式となりました。出席者はマスクを着け、席も広く間隔を取りました。新型コロナウイルス。文章を書いている時点ではまだ、終息の見通しは立っていません。

 幕末の志士、高杉晋作が残したとされる句が好きです。「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」。野村望東尼が加えたともされる下の句がポイントで、世の中おもしろく生きるかどうかは、自分の気持ちの持ちようであるとわたしは、解釈しています。辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、人生はいいことばかりではありません。しかし同じくらい、いやそれ以上に楽しいこと、うれしいこと、そして面白いことがあります。 

 2月初旬の沖縄キャンプで阪神・矢野燿大監督と話す機会がありました。「優勝します。優勝できるじゃないんです。優勝するんです。11月17日に日本一になります。胴上げをします。だれに何と言われようとも、わたしがそう言っているんです」。阪神の監督から、こんな言葉は初めて聞きました。目標を口にする。監督が断言することで達成する。夢を現実にする。そういうことです。もちろんこの時点では開幕がずれ込むことはなかった。日本シリーズの日程まで、矢野監督の頭にあったのです。

 デイリースポーツにとって創刊72年目の船出となります。支えていただいた関係者、読者に心より感謝申し上げます。日本全国で2番目、西日本エリアでは最初の日刊スポーツ新聞として、1948年8月1日に神戸で産声を挙げました。創刊当時の様子を、社史では以下のように書いています。

 「神戸駅から西へ、新開地の焼け跡に米進駐軍のキャンプが建った。キャッチボールを楽しむ兵士たちの姿が見えた。彼らが持ち込んだものは、ラッキーストライクのデザインと香り、スイングジャズにスポーツ。すべてを楽しむといった自由の享受である」

 戦後間もない昭和23年。神戸新聞の社員たちが見た進駐軍キャンプが、デイリースポーツの創刊を決意させた。デイリースポーツとは、スポーツ新聞とはという問いかけに、わたしはこの風景を思い浮かべる。スポーツに宿る精神とは、自由である。最大限の肉体表現を求め、人の持つ可能性を精神の極限で発揮する。その美しさと喜びを、読者に伝えたい。

 「デイリースポーツは、阪神が勝ったら題字がトラのしっぽになるんでしょ」と言われます。その通りです。デイリーを発行する神戸新聞社の初代社長・松方幸次郎は、阪神タイガース初代オーナー・松方正雄の兄です。デイリーとタイガースはつまり、親戚のような関係。デイリーが阪神報道でトップランナーを目指すのには、そんなきっかけがある。

  矢野監督は就任1年目の2019年はチームスローガンに「ぶち破れ!オレがヤル」と掲げました。2年目の2020年は「It’s 勝 time」です。勝つは笑うのショウともかかっています。笑って、楽しく勝つ。目標を口にして、夢をかなえる。デイリースポーツもまた同じスタンスで2020年のチャレンジをします。現状にとどまらず、新たな挑戦をします。東京から広島、愛媛、大阪へと広げてきた印刷体制、阪神報道を柱にしたブレない紙面で、読者のみなさんにより最新ニュースが入り、カラーページを増強した紙面をお届けします。

 社是は「デイリースポーツ同人は、スポーツの振興と、娯楽の健全化を通じて、国民の文化向上につとめる。」と定めています。ブレないデイリーはプロ野球だけでなく高校野球、大相撲、ゴルフ、サッカーなどの各種スポーツ、そして芸能、社会ニュース、競馬、公営ギャンブル、パズル、レジャーなどの情報が満載です。元気に明るく楽しく、きょうのそしてあすへの糧となる新聞をお届けします。

 デジタルへの情報発信も大きな柱です。生きた情報、足で稼ぐ取材、人と人の触れ合いによって得た情報こそ、デイリースポーツとして発信する価値のあるものです。取材記者だけではなく見出しを付けて紙面をレイアウトする整理記者、広告事業担当、販売担当、デイリースポーツにかかわるすべての人間には常に、自らを律し鍛えることを求めます。見たもの、聞いたことに対する感性こそが、読者の要求に応えられる原動力です。

 センバツ高校野球が中止になり、大相撲も無観客。東京五輪・パラリンピックも1年間の延期が決まりました。プロ野球の開幕も予定を変更せざるを得ませんでした。あらゆるスポーツ、芸能イベント、競馬やボート、競輪などのギャンブル関係も大きな影響を受けています。負けません。亡くなられた志村けんさんからの「だいじょうぶだあ」というメッセージを忘れません。

2020年4月

デイリースポーツ代表取締役社長 改発博明