急成長・薮田は「1点の重み」を感じた投球を!

 いよいよ広島のマジック点灯が近づいてきた。先週の4位・巨人、最下位・ヤクルトとの6連戦を着実に2勝1敗として2カード連続で勝ち越し、ついに今季60勝に到達。昨年は7月末から8月上旬にかけて負けが込み、2位だった巨人の猛追を受けたが、今年はそんな気配は感じられない。

 この6試合で特に目に付いたのは、広島の『守備力』と『走力』である。九里が久々に先発した28日のヤクルト15回戦(マツダ)。初回に連打で無死一、二塁とされ、3番・バレンティン放った中越えの打球を丸が好捕。普通なら2走・坂口は悠々タッチアップして三塁に進んでいるはずが、なぜか二塁から動けなかった。これが幸いして4番・山田を併殺に仕留めて九里は窮地を脱した。一方、広島は四回に松山が左翼越えの適時二塁打を放ってヤクルトを突き放す。うまいレフトなら捕球可能な打球だったが、バレンティンは取れなかった。この『守備力』の差が、勝敗を大きく左右した。

 そして30日の17回戦。広島1点リードの六回表、2死1、二塁から岡田が大松に右前打を許した。二走は俊足の坂口。普通ならセーフで同点となるはずが、右翼・鈴木のムダのない動きと素早い送球で本塁で刺殺し、ピンチを脱した。その裏、好守の鈴木が追加点となる21号3ランを放ち、さらに打線爆発で一挙8点を奪った。その最後の8点目が圧巻。2点適時打の菊池を一塁に置き、丸が左中間を深々と破る。すると菊池はトップスピードに乗って二塁、三塁と回って一挙に本塁生還。最後も捕手・中村のタッチをかいくぐり、左手で本塁ベースをかすめてこの回8点目を奪った。「1点をやらなかった」鈴木の守備力と「1点を奪った」菊池の走力が光った。これが今回の6連戦のポイントだったと言える。

 巨人戦の野村と大瀬良、そしてヤクルト戦の九里と岡田。先発した各投手がそれぞれの役割を果たし、きっちりと白星をゲットした。そんな中で、先発転向後6連勝中と好調をキープしてきた薮田が29日のヤクルト16回戦で3被弾を食らって今季2敗目を喫した。ここに少し触れたい。

 1-1で迎えた五回、薮田は2死三塁の場面で8番・奥村を迎える。次が投手・小川ということを考慮すれば、際どいコースを突きながらカウントを悪くした時は歩かせればよかった。ところが0-1からの2球目の速球が甘く中に入り、勝ち越しの左中間二塁打を許してしまった。捕手の会沢も含め、バッテリーがより慎重になってこの2点目を防ぐべきだった。薮田は続く六回、名手の二塁・菊池の失策から1死二、三塁のピンチを招き、山田に致命的な3ランを喫し、さらに続く大松にも連続本塁打を浴びる。いつも助けてもらっている菊池の助けるためにも踏ん張ってほしかったが…。ただこの4点より前の回の1点の方が痛かった。

 今年の味方打線は確かに凄い。それだけに「1点の重み」を忘れてしまいがちになる。あの時の薮田がそうだったとは一概には言えないが、それでも1点を軽視したかのような失点だった。薮田は今年、ジョンソン不在の間、ほぼ大黒柱に近いような働きをしてきた。それは今後も変わりない。同じ9勝を挙げた岡田と共に、来る秋の大一番にはエース格として矢面に立つことになるだろう。経験の少なさなど関係ない。リーグ連覇を目指す今季、エースに近い活躍をしてきたのだからそれは当然なのだ。だからこそ余計「1点の重み」を感じてほしい。マウンドで冷静に状況を判断する力を養い、未然に失点を防ぐ-。決して簡単なことではないがが、薮田には是非これを心がけてもらいたい。

 リーグ連覇に向けた「最後の4コーナー」に入る8月戦線。最初の週は2位・阪神、3位・DeNAとぶつかる6連戦になる。阪神戦は野村、大瀬良、九里、そして敵地・横浜に移動してのDeNA戦は、2年目左腕・高橋樹、薮田、岡田が先発すると予想される。基本的には1つ勝てばOKだが、秋のクライマックスシリーズでぶつかる可能性の高い両球団だけに、短期決戦を見据えた戦い方をしてほしい。強力打線の得点力が高いとはいえ、短期決戦ではそう簡単に点は取れない。薮田ではないが「1点の重み」を感じながら、これをどう取り、どう防ぐか-ということをチーム全体で実践すること。そんな高い意識が、昨年掴み損ねた日本一につながっていくのだと思っている。

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