【35】木製対応に高い意識 金属バット普及-国際基準に壁
「日本高野連理事・田名部和裕 僕と高校野球の50年」
初めて日本で開かれたU-18ワールドカップで日本代表は8連勝と快勝を続けていたが、惜しくも決勝で再び米国に敗れた。
しかし、甲子園の大会からわずか1週間でチームをまとめた西谷浩一監督(大阪桐蔭)、仲井宗基(八戸学院光星)、島田達二(高知)両コーチの手腕に心から敬服する。
以前から気になっているのが国際大会での木製バットの対応だ。
ハワイとの交流で金属製バットが我が国に紹介され、74年から大会での使用が解禁となった。すでに40年以上になる。
この間、折損事故や試合専用バットの登場で、より木製バットの性能に近づける規制を重ねてきた。
01年から金属製バットの重量を900グラム以上とし、打球部の直径も2ミリ細くし、67ミリと規制した。打球部の肉厚を厚くし、直径を細くすることで打球への反発力を抑えることと耐久性を増すことに繋がった。
当初は重いバットに少し手こずったようだが、すぐに対応し、むしろヘッドが重くなった分だけでボールへのエネルギーが大きくなり飛距離が増したかも知れないという見方もあった。
ともあれ耐久性は格段に向上した。現在は普通に使えば3シーズンは使えるという。
ところで国際大会への対応に苦慮した。途上国の経済事情も考え、国際大会で非木製バットの使用を何度か提案したが、ナショナルチームとの関係を重視する意見が多く、採用に至っていない。
しかし、今回のU-18ワールドカップに出場した選手は、あまり違和感なく木製バットを使いこなしていた印象を受けた。
その事情を西谷監督に聞いた。第一に挙げたのが高校日本代表に選ばれることが甲子園出場の次の目標となっている選手が多いことだという。卒業後のことも考え、普段から木製バットへの対応を意識し、木製合板バットや竹バットを使っている。ただ「当てに行く」弊害もあるので金属製バットのようにしっかりスイングするよう指導しているという。
次に西谷監督の印象として木製バットの形状がだんだん変化し、以前のような画一的な形状ではなくバランスなどにも多様性が感じられるという。
日本代表選手の技術的なレベルもあろうが、事前合宿以来、期間中の折れた本数はわずか3本だそうだ。
全国17万人の部員が使用することを念頭に置けば、国内ではどうしても経済性を優先せざるを得ない。
ともあれ国際大会で、金属製バットとの戸惑いがずっと気になっていたが、現場はしっかり対応してくれていることを知り、正直ほっとした。