WBC日韓に共通する課題…代表の柱になれるのは誰?

 これまでWBCは「メジャー選手が参加しない国際大会」と揶揄されたものだった。しかし今回はどの強豪国も大挙して参加。その点、日本は青木宣親(アストロズ)のみで、気がつけば日本にとってWBCは「メジャーリーガーが居並ぶ他国チームに挑む大会」の様相を呈しそうだ。ダルビッシュ有や田中将大など、故障明けの選手も多く、その点では時期が悪かったとしかいいようがない。

  同様に運の悪さを被っているのが、隣国の韓国だ。2月7日に最終28名のエントリーが発表されたが、こちらもメジャーからの参加は呉昇桓(カージナルス)のみで、結局、国内組中心での編成になった。そのためか韓国内のスポーツメディアは「歴代最弱か?」と不安視もしている。たしかに顔ぶれを見れば寂しさは否めない。投手では金廣鉉(SK)、柳賢振(ドジャース)らの名前はなく、攻撃面では秋信守(レンジャース)、姜正浩(カン・ジョンホ)らメジャー組の名前が外れるだけで、正直、見劣りもする。

 それは、言い換えれば世代交代がうまくいっていない証左でもある。前述の金廣鉉、柳賢振は08年の北京五輪や09年の第2回大会で主軸となった投手。8年も9年も経っているなら、そろそろ国際大会は“卒業”させてあげてもいいキャリアだ。攻撃面もしかり。30半ばでいまだに第1回大会から出場しているとしたら、よほど必要な存在か、下が育っていないからとしか思えない(これは韓国のみならず、他国にもいえることだ)。

 実際、韓国の金寅植代表監督も「選手育成が成功していない点は、韓国球界の課題だ」とも述べている。

 いずれにせよ、メジャー組の力を全面に押し出せずに戦うことになった日本と韓国。似て非なる国と野球だが、今回、共通した要素がふたつ、見えてきた。

 ひとつは「投手予備登録」を使わないことだ。日本では小久保監督が「故障者が出ない限り使わない」と述べている。1次ラウンドから勝ち上がったメンバーで戦っていきたいという考え方からだ。日本は今回「結束」をテーマにもしている。

 実は韓国も、予備登録を使わないことを金寅植監督は明らかにした。「リザーブがいると思うと、代表選手が(緊張感を失いかねず)士気が低下しかねない」という考えからだとか。ともに共通しているのは、戦う上での精神性だ。合理的に考えるなら、サブはいるに越したことはない。だがそれをある意味、断って臨む。東洋人らしい発想だろうか。

 同様に両国は、リーダーの存在を大事に考える。ここでいうリーダーは監督ではなく、選手のとしてチームを引っ張る立場のことだ。エースであり、4番、あるいは打順にとらわれずとも、つねにメンバーを牽引していく野手の存在だ。いわば「チームの柱」。

 韓国には、かつてはその場所にイ・スンヨプがいた。打席に立たずともベンチにいるだけで若手選手が不安を持たず、グランドに、打席に立てた、そんな存在。北京五輪など彼の目に見えない貢献は絶大だった。06年のWBC第1回大会は、そこに李鍾範がいた。死球を恐れず、投手に向かっていく執念は、後続の打者たちにどれだけ緊張感と安心をもたらしたか。各大会、そんな選手が韓国にはいた。1次ラウンドで敗退した13年の第3回大会には、そうした選手が見あたらなかったことも、敗退の要因のひとつだったように思える。

 では今大会はどうか。結果的に、李大浩が座った。彼は言動でチームを鼓舞するタイプではないが、4番打者として文字通り中心選手としてその役を果たせる。

 ただ李大浩も、最終的にエントリーが確定するまで、参加が不透明だったと聞く。表向きには参加の意向を示し続けていたが、他ならぬ所属先が決まっていなかったからだ。マリナーズと再契約していれば問題なかったが、より多い出場機会を求めて退団した。米国、日本、韓国復帰とみっつの選択肢は、本人にとってはともかく、WBC組閣関係者には堪らないものだった。実際、契約は越年し、1月に入ってようやく古巣の韓国ロッテに戻り、事なきを得た。これがメジャーなら、2月から3月の期間、容易にチームから外れていることは許されなかっただろう。

 4番として、李大浩がどっしりと座る。その意味は、打撃の中軸選手以上の意味を持つ。無論、日本とメジャーでプレー経験があることも強みだが、もたらす安心感は日本ではないが「結束」にもつながる。

 ではその日本は、果たして誰なのだろうか。唯一のメジャー組である青木か。代表経験豊富な内川聖一か。その点、まだ自他共に「この選手」と見えてこない気がする。

 メジャーリーガーという「純粋戦力」に頼らず、ともに結束して戦うかのように見える今回の日本と韓国。あるいはこの「リーダー」がいかに機能するかどうか。それも決勝ラウンドへ進む大事な要素になるはずだ。

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