「広島３－６巨人」（４日、マツダスタジアム）

　広島は逆転負けで連勝を逃した。首位・巨人とのゲーム差を２・５に広げられた中、輝いたのはドラフト３位・中村健人外野手（２４）＝トヨタ自動車＝だ。三回と四回の右翼守備で強肩を披露し、２イニング連続の補殺を記録。相手走者の本塁生還を許さず、打っては２試合連続の適時打。頼もしいルーキーが攻守で気を吐いた。

　右腕から思い切り良く放たれた白球が、３万人を超えるファンの興奮を呼んだ。時間にして数秒間のせめぎ合い。右翼・中村健が相手走者との手に汗握る攻防を２度も制した。「どちらも０－０の場面。振り返ると、本塁打を２本打てたようなものだった」。敗戦の悔しさが募る中、ルーキーが１試合２補殺で鮮烈な印象を与えた。

　まずは０－０の三回だ。２死二塁で吉川の打球が一、二塁間を抜けた。素早く捕球し、本塁へ低く鋭い送球。二走・大城を本塁で刺した。続く四回は２死二塁から丸の右前打で二走・香月が本塁へ突入した。背番号５０は無駄のない動作で果敢にバックホーム。送球は少し一塁側にそれたが、判定はアウトとなった。

　巨人ベンチがリクエストするも判定は覆らず、２イニング連続の補殺。会沢、菊池涼という守備の要が欠場した一戦での堅守には、大きな価値があった。補殺の直前には肩を回しながら準備を施し「補殺は盛り上がるプレー。（好守を）２つできたのは良かった」と胸を張った。

　爽快感たっぷりの“レーザービーム”に、鯉党からは驚きにも似た声が上がった。少しでもロスがあれば成立しなかったアウト。「普通のことを最上級にやることがこだわり。一歩目、守備位置、相手の特徴や展開を頭に入れてから投球を迎えること。当たり前のことをやることが一番」と明かす。俊敏かつ正確な好返球は、守備への高い意識に裏打ちされている。

　バットでは五回、２点を先制してなおも２死一、三塁で戸郷から左前へ適時打。「いいスイングができて良かった」としぶとく三遊間を破った。プロ初打点を挙げた前日の勢いそのままに、２試合連続で適時打を放った。

　外野の定位置は五回に鮮やかなバックホームで３イニング連続の補殺を完成させた西川以外、２枠が流動的な状況。この日のようなアピールを継続できれば、レギュラーの座は大きく近づく。「チームの勝利に対して、一つ一つ埋められるように一瞬、一瞬を全力でやりたい」と中村健。鯉の“元気印”がチームに活力を与えていく。

　◆新人外野手の１試合２補殺　１９５０年以降、球団新人外野手の１試合２補殺は６９年・山本浩司（当時）が「５番・右翼」で出場した４月１５日・大洋戦（川崎）で記録した例がある。他球団では日本ハム・大谷翔平が「７番・右翼」で出場した２０１３年７月９日・楽天戦（東京ドーム）で六回と八回に記録している。