緒方カープ3連覇!広島に笑顔が咲いた…被災地に「希望」約束果たした

 「広島10-0ヤクルト」(26日、マツダスタジアム)

 優勝マジックを1としていた広島が26日、ヤクルトを下して球団史上初のリーグ3連覇となる9度目の優勝を飾った。緒方孝市監督(49)は本拠地のマツダスタジアムで9度舞い、27年ぶりに本拠地で優勝を決めた。7月に西日本豪雨が発生。復興の道を歩む広島の街へ勇気と感動を届けた。今年こそ、悲願の日本一へと突き進む。

 悲しみを乗り越え、頂点に立った。27年ぶりの本拠地優勝となるマツダスタジアムで悲願の胴上げ。真っ赤に染まったスタンドが揺れる中、緒方監督が9度、宙を舞った。未曽有の豪雨から約2カ月半。広島の街に約束の瞬間を届け、3連覇の喜びをかみしめた。

 「最高ですね。夢のような時間でした。信じられないような悲しい出来事もあったんですけど、そこから気合を入れ直して、信じられないような勝ち方もあった。選手たちがよく頑張ってくれました」

 苦しい1年だった。新井、鈴木、丸、野村…。開幕から故障者が相次ぎ、主力抜きの戦いを余儀なくされた。「一番大事」と言った交流戦では投手陣が崩壊し、4年ぶりの負け越し。4月下旬から首位に立ったが、監督就任以来掲げる「投手を中心とした守り勝つ野球」からかけ離れた。

 7月上旬には西日本豪雨が発生。広島県内の各地で浸水や土砂崩れが起こり、指揮官の家族も避難。被害の大きさを伝える写真に言葉を失った。本拠地で開催予定だった同9日からの阪神3連戦は中止。「言葉にならないというか、非常につらい…」。連日、募金箱の前で声を張り上げ、手を握った。3連覇は宿命に変わっていた。

 復興の象徴となるよう、チームは快進撃を続けた。丸、鈴木が打線を引っ張り、大瀬良、フランスアが投手陣を支えた。変化も恐れない。「打線の看板」と話していたタナキクマルの解体を決断。さまざまな意見が飛び交う中、コーチの進言にうなずいた。日頃から「うちは完成されたチームではない」と繰り返す。勝負勘は年々、研ぎ澄まされている。

 バッグに1冊の本を忍ばせている。緒方監督が「神様だ」という松下幸之助の著書「成功の金言365」だ。数々の格言からチーム作りを学び、悩んだ時は手に取った。「4年間ずっと持ち歩いている」と言う指揮官にとってのバイブルだ。

 生真面目で不器用な性格だが、優しさも併せ持つ。春季キャンプ初日。日南市の幼稚園児による歓迎の言葉に目頭を熱くした。妻と長女が書いた絵本「僕のヒーロー」を引用して声を合わせる姿に「ああいうのを見ると泣きそうになる。絵本を贈ってあげようか」と家族に内緒で計300冊をプレゼントした。

 「野球から離れる時間も必要」と言う。癒やしは家族と愛犬ユウショウ君の存在だ。犬の鳴き声で目覚め、日課の散歩ではクラシック「カノン」を聴いて頭を整理。中学生の息子とはサウナやゴルフの打ちっ放しに出掛けて気分転換。遠征中は関東の大学に通う長女と食事するなど、父親の顔ものぞかせた。

 8月下旬には体調を崩し、初めて練習に姿を現さなかった。顔は青ざめ、試合後の会見では意識がもうろうとした。首位独走の中、疲労はピークに達していたが「大丈夫」。家族にも詳細を伏せ、強い指揮官であり続けた。

 今年の絵馬には「日本一、優勝」-。4月に逝去した鉄人・衣笠祥雄さんのお別れの会では「秋にリーグ優勝と日本一の報告ができるように精いっぱい頑張ります」と瞳を潤ませて誓った。昨季の悔しさを忘れるはずがない。34年ぶりの日本一へ今年こそ突き進む。

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