楽天・岸「今」から逃げない 不惑40歳「年だからで済まされたくない」 引き際の心境変化「無理ってなるまで」

 25年シーズンに並々ならぬ思いで臨む選手を取り上げるキャンプ企画「今季に懸ける」。第5回は昨年12月に不惑を迎えた楽天・岸孝之投手(40)の本音に迫る。昨季3年ぶりに規定投球回に到達するなど進化を続けるベテランの今とは。変わりゆく引き際の美学も語った。

  ◇  ◇

 ここ数年の目標は変わらない。目尻のシワも少しずつ色濃くなった岸が、迷うことなく今年のテーマを言葉にした。「30歳後半を迎えてからはケガせず、健康第一が一番の目標」。少しだけ表情が緩む。昨年12月に迎えた不惑、40歳。年齢がついて回るのが常だ。

 「自分でもさすがに年は感じる部分もある。だからといって、年だからで済まされたくはないから、そう思われないようにやっぱりやることはやっておきたいなという気持ちですね」

 日々の生活の中で重要視するのは睡眠。なるべく深い時間にならないように心がけている。また先発の“職場”は週に一度しかない。「そこの試合に、言ったら人生かけてやるところ」と毎試合腹をくくる。悔いは残さない覚悟もある。ケガをしないと誓う一方で、極端に練習量を減らさないことが、今年プロ19年目を迎えた岸の流儀だ。

 「変わらないのは走ること。今いろいろあるじゃないですか。これをやった方がいいとか、ランニングは意味ないとか。いろいろあるけども、やっぱり若い時から走ってきて、今があると思うのでそこは信じて。それが大事だなと思ってやっているので、そこはブレずに。なるべく走り込もうかなとは思っています」

 特に強いこだわりを見せるのは、先発投手としての矜持(きょうじ)でもある。真っさらなマウンドに上がり、最後までその居場所を譲らない。完投、完封への意志を持つ。昨季は3完投、2完封を果たし、イニング数はグッと増加。3年ぶりの規定投球回にも到達し、防御率2・83と勝敗以外の貢献度も大きかった。

 「もちろん先発をやっている以上は、完投はしたい。その日の状況、自分の体の状態、相手の調子がある中で、ツイているなと思うこともたくさんあるわけですよ。でも今、100球前後で代えられるこの時代。なかなか難しいけども、先発だったらみんな目指してほしいなとは思います」

 かつて、広島の黒田博樹氏が言った。「今の野球は分業制。だからこそエースが完投して、リリーフを休ませてあげる。それがチームの力になる」。岸もルーキーイヤーからマウンドに立ち続けることで信頼を得た。45完投は現役選手の中では3位につける。

 「そこで、それで育ってきているから。やっぱりその試合を任されるのが先発じゃない?」

 現在地を見つめ、40歳という「今」から決して逃げない。07年に西武で始まったプロ野球人生。先を見ることなく、一年一年を大切に駆け抜けてきたからこそ考える岸の引退とは-。心境に変化があったのは最近のことだ。

 「昔はもうスパッと辞めようとか思っていたけど、まさかここまでできるとも当時は思っていない。だから今はもう無理ってなるまではやろう…やりたいなっていう気持ちではいる。それがもう投げられませんなのか、もう若手にかないませんなのか、戦力外なのか。そうなるまでは頑張って、子供たちにかっこいい姿を少しでも見せられたらいいなっていう気持ち」

 最後のその時まで、絶対に諦めない覚悟ができた。そして、岸にはある野望もある。これまで3度上がった開幕マウンドでいまだ勝ち星なし。大役を担うだけでは終われない。

 「開幕投手をやって勝ちたいなっていうのはありますよ。これまでもケガしたりなんだりでなかなかうまくいかない。もう一回。最後の思い出にじゃないけど、やって勝ちたい気持ちはもちろんある」

 揺れ動く気持ちの中で、信じるのはこれまでの自分自身が進んできた歩み。目標尽きるその時まで、岸は変わらず走り続ける。

 ◆岸 孝之(きし・たかゆき)1984年12月4日生まれ、40歳。宮城県出身。180センチ、77キロ。右投げ右打ち。投手。名取北から東北学院大を経て06年度大学生・社会人ドラフト希望枠で西武入団。16年オフに楽天へFA移籍。最高勝率1回(14年)、最優秀防御率1回(18年)、ゴールデングラブ賞1回(18年)。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

野球最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(野球)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス