「巨人７－６中日」（１４日、東京ドーム）

　巨人・中田は伏し目がちに打席に入った。前打者の岡本和が申告敬遠されて迎えた２点を追う七回１死満塁の絶好機。「最初から（岡本和は）敬遠だろうなと準備はしていた。その辺は冷静に打席に立てた」。静かなる闘志をバットに乗せて描いた値千金の逆転満塁弾。悔しさも全て吹き飛ばす通算７本目のグランドスラムに背番号１０は雄たけびを上げた。

　「興奮してたんで、あんまり覚えてない」。祖父江の真ん中に入ったスライダーを一振りで仕留めた。左翼席に飛び込んだ打球を見届けてからも、スピードを緩めずにベースを蹴り、両拳でガッツポーズを作って本塁に生還。逆転満塁弾は自身３本目。ここぞの場面で開演した“翔タイム”に観客も総立ちとなった。

　前打席の六回無死満塁では二飛に倒れて「本当に悔しかった」。地面にバットをたたきつけそうになった衝動を抑えた後の打席で生まれた快音に「また同じような場面で回ってきたので、絶対なんとかしてやろうという気持ちだった。ああいう結果が出たので、すごく良かった」とホッと一息。本塁打までの筋書きも完璧だった。

　移籍後初の２戦連発で状態も上向いてきた。「あのバントの次に興奮しました」と、冗談っぽく前日の同戦で決めたプロ初犠打を引き合いに出して歓喜の一発を振り返るなど“中田節”も復活。雪辱を期す大砲の逆襲は、まだ序章にすぎない。