「ウチにもイチローさんが来て欲しい」。そんなひと言が実現した高松商業の長尾健司監督は１２日、前日から続く２日間の指導を受け終え、「１カ月分の練習をした感じです」とイチロー氏の言葉の重みを実感した。

　発端は今夏の甲子園。イチロー氏の指導を受けていた智弁和歌山に敗れた後、「イチローさんにも教えていただいて、強くなったんだろうな。やる気が出たんだろうなと思うと、ウチにもイチローさんが来て欲しいですね」と発した言葉だった。これは「全国で勝つためには、智弁和歌山のような落ち着きと積み重ねたもの（が必要）。積み重ねた自信ですよね、彼らの。その自信を植え付けるために、イチローさんのひと言が多分、この冬、彼らを強くしたと」という思いから出てきたのだという。

　「落ち着きというか、ピンチにも動じない。そう思った時に、精神的な部分、支えてきたもの。もちろん、中谷監督が一番だと思うんですけど、イチロー選手との出会い。世界の選手との出会いが大きかったと思っただけで」という思いもあった。それが実現し、「でも、ありがたいことです。このまま終わってほしくないです」と自分達の手で形にすることを誓った。

　他の高校での指導と同じく、実演を交えた内容になった。「世界ナンバーワンのバッターですからね。とんでもない。いいのか、という感じですから（笑）。こんなのを見ていていいのか、という」と恐縮していた長尾監督。イチロー氏から託された練習時に使用していたバットは、「毎回、練習の時に持って来て、飾っておこうかな」と考えているという。盗難防止のため、練習後はしっかりと片付けるという。

　また、浅野主将は「テレビでしか見たことがなかったんですけど、実際に目の前に現れたので、いい経験というか、すごいなと思いました」と“生のイチロー”に感動した様子。積極的に選手からの質問も行い「初めは話しかけづらい感じなのかなと思ったんですけど、一つ言ったことに対して、何個か答えてくれて。これまで自分たちが正しいと思っていたことが、覆されたなと思います」と衝撃を受けていた。

　キャッチボールをとってみても、「レベルが違いました」、「イチローさんはずっと真っすぐ伸びてくる」「やばいです。手が痛かったです」と率直に驚きを口にした。来年の夏へ向けては「今年の夏、智弁和歌山さんがイチローさんに指導を受けて、すぐに優勝したので、自分たちもイチローさんの指導を受けたので、しっかり結果を残して、来年の夏、いい報告をイチローさんにできたらなと思います」と誓った。