日本S第6戦、連続失策でもぶれなかったオリックス・山本の精神力
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回はいずれも2点差以内で、球史に残る熱戦が繰り広げられた日本シリーズの第6戦。気温6度の寒さの中、オリックス・山本由伸投手(23)が9回141球の熱投を見せました。オリックス担当・達野淳司記者(50)が振り返ります。
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日本シリーズ第6戦は1-1の同点で迎えた六回、山田、村上のところで宗、紅林が連続失策。山本は一瞬、天を仰いだが、表情を引き締めると2度うなずいた。そして無死一、二塁のピンチにサンタナを二ゴロ併殺打、中村を遊ゴロに打ち取り無失点で切り抜けた。
「ピンチになりましたけど、抑えられると思いました。次がサンタナだったので三振もあるし、大丈夫と思いました」
どのボールをとっても一級品と言われるが、精神力の強さこそが山本の最大の武器かもしれない。今季は初の開幕投手から始まり、東京五輪ではエースとして大事な試合の先発を任された。どんな大舞台になっても、どんなピンチを迎えても「動揺することはなかったですね」と話す。
この試合、八回を3者連続三振に打ち取りベンチに戻ったところで高山投手コーチと握手。交代かと思われたが、九回も続投した。
「八回、マウンドに上がる前に高山さんにトイレで会って冗談で“あと2回行きますよ”って言ったら“バカか、あと1回だ”って言われていた。マウンドに上がる前はその回をしっかり抑えようと思ったんですけど調子が上がっていた。若月さんからも“もう1回いけるって(監督に)言うぞ”って言われたので、僕も“よっしゃ、いこうっ!”てなりました」
八回を終わった時点で自己最多の126球に並んでいたが、志願の続投で三者凡退に抑えた。結局、チームは延長十二回の末、敗れ日本一を逃した。「本当に悔しいです」と漏らしたが、自身の投球については「今季の中でも一番気持ちのこもった投球ができたと思います」と話した。
今季は26試合に先発し、18勝5敗。東京五輪では2試合、ポストシーズンも3試合に先発した。合計229回で防御率1・34。驚異的な数字が残った。
「1年間やってきて最後にこういうパフォーマンスができたのはレベルアップを感じられました。負けましたけど力は出し切れたと思います」
シーズンの15連勝から負けずに終わった2021年。「だんだんレベルが上がっていく実感がありました」と振り返る。日本のエースに成長した右腕だが、今も成長過程と言い切った。
われわれは間違いなく球史に残る大投手を見ている。

