南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた野村克也氏が１１日午前３時半、都内の病院で虚血性心不全のため死去した。８４歳。テスト生で南海に入団し、６５年に戦後初の三冠王を獲得するなど、数々のタイトルを獲得。現役引退後は「ＩＤ野球」を掲げ、ヤクルト監督時代に４度のリーグ優勝、３度の日本一を飾り、「ノムさん」の愛称で親しまれた知将が、静かに息を引き取った。葬儀は密葬で営まれ、後日、お別れの会が開かれる予定。

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　「こんなとこ見られたら、サッチーに殺されるな」。肩をすくめながら、野村監督はよく笑っていた。右手にはミルクだけ入ったホットのコーヒー、左手にはきんつば。健康管理のため沙知代夫人の厳しい視線があり、自宅では口にすることができなかった大好物を、球場ではうれしそうに、パクパクと口に運んでいた。

　沙知代夫人あっての、野村監督。２人との別れが、こんなにも早く来るとは思ってもいなかった。

　卓越した野球理論、ＩＤ野球。野村監督をたたえる表現はたくさんあるが、一番のすごさは「言葉で伝える力」だと思っている。

　年末年始はハワイの最高級ホテル・ハレクラニのプールサイドの一室にこもり、出歩くことなく本を読みあさり、その年のミーティングで伝える言葉を書きしたためる。野球が好き、野球中心。だが野球だけでもない。心にとどまる名語録は、こうして生まれていた。

　ヤクルト・高津監督が号泣したという。阪神・藤川も昨年、「今になって分かる」と「ノムラの考え」に言及したことがあった。私も含め、年を重ねた“教え子”たちの心の中に、野村語録は生き続けていくのだろう。（デイリースポーツ・９４～９６年ヤクルト、９９～０１年阪神担当・玉森正人）