ソフトバンク・城島健司氏インタビュー「技術指導はコーチ。口を出すつもり全くない」
15年ぶりにソフトバンク復帰となった城島健司球団会長付特別アドバイザー(43)を直撃した。王貞治会長(79)からのオファーや自身の役割、球団の未来像、このキャンプで王会長に叱られた内緒話など、さまざまな角度から単独インタビューで迫った。
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-キャンプ地でファンからサインを求められる。人気は相変わらずだ。
「選手は何がうれしいかって、注目されて人に見られること。それは大事なことでもある。人に見られていると、手を抜いたプレーもできない。ファンサービスの意識も高くなる」
-キャンプ初日に王会長から久々に叱られた(注)。
「ジャージーの話ですけどね(苦笑)。自分の色を出そうというか、ジーパンで来たんですよね、普段通り。その球団会長付アドバイザー43歳が、79歳の会長にキャンプ初日から真剣に怒られました。僕らしいでしょ(笑)」
-王会長からのオファーは引退後、ずっとあったと聞いている。このタイミングで受けた理由がある。
「オリンピックイヤーでもありますし、こういう新しい役職まで用意していただいた。それにチーム状況もある。工藤さんという名将が指揮を執っていて、2年連続でリーグ優勝を逃している。でも、3年連続日本一というね。そんなタイミングもあるでしょうね」
-役職名から役割がイメージしにくい。
「工藤監督が望んでいるのは、首脳陣でもフロントでもない。選手からすると『兄貴的』な感覚で、と言われています。『これという指定はないが、話をしてほしい。相談に来たら乗ってやってほしい』ということだった。世間話をね」
-技術は基本的に教えない。
「技術指導はコーチがするもの。その選手を長く見ているプロがいる。技術に口を出すつもりは全くない」
-ホークスの常勝軍団への道のりは簡単ではなかった。
「人が来てくれることを当たり前に思っている今の選手たち、昔のことを知らない選手が『黙っていても人は来る』と思っていたら、また昔に戻ってしまう。キャンプ中、誰よりも王さんが率先してファンにサインをした。(このキャンプ地では)選手が練習の移動中にファンとタッチしたり、声掛けをしてもらえる動線ができている。その積み重ねが今のチームの礎をつくっている」
-それを継続していくのが、王会長が監督時代に育てた選手たち。城島アドバイザーもその一人だ。
「王さんの野球を一番近くで感じて、グラウンドで見て、一緒に過ごしてきた。グラウンドでの王さんの考え方、ファンへの接し方も教わった。それを選手が実践したから、今のホークスの人気がある。それを未来に残さなきゃいけない」
-球団を強くするには現場だけでなく、フロントの力が必要だ。
「ホークスの良さで言うと、現場からフロントまでの風通しがいい。なぜかと言うと、王さんがいるから。現場を一番理解しているレジェンドが、会長という立場でフロントにいるから球団がうまくいっている」
-そういう意味でも王会長の存在は大きい。
「王さんだって人間だから、50年後も60年後も生きていない。いや、生きていそうですけど(笑)。さっきもそんな話になって、『会長は死なないでしょう』って、王さんに言ったら。『俺は運がいいんだ』って」
-王会長は城島アドバイザーがドラフト1位で入団した1995年にダイエーホークスの監督になった。
「今年80歳ですからね。いつか王さんがいなくなって、その考えを知っている人がいなくなったら、今後は続かない。そういうことに対して、手助けができればと思っています」
-ホークスは優勝を義務付けられたチームに成長した。
「勝つのが当たり前のチームとして、プレッシャーはある。一方で、選手を入れ替えできないひずみも必ず来る。ホークスはあのドームの満員の観客の中、ホームタウンの地の利が如実に出たチーム。遠征でうまくいかなくても、福岡に戻れば何とかなるんだと思って戦った。その地の利はファンがつくる力、メディアの人がつくる力でもある」