【野球】原監督パチパチパンチ故貢氏が

 巨人・原辰徳監督が今季限りで勇退した。通算12年に及んだ監督生活。19日に行われた勇退会見では監督人生で学んだことを聞かれ、こう答えた。「ありきたりではあるけど、我慢だね」。

 今季は特に、その思いが強かっただろう。前半戦はけが人が続出し、シーズンを通じて打線が低迷。タイムリーが出ず、フラストレーションのたまる展開が繰り返された。阿部、坂本、長野、村田ら、原監督が能力を評価する選手が活躍できず、チームは最後まで波に乗りきれなかった。

 我慢との戦いが続いていた9月上旬。その心境を問うと「今年は去年以上にふがいない試合が多いな。でも、我々は『ふがいない』では片付けられないんだよな。どうしたらいいか。今年は自分の中で、怒りを静める方法というのを身につけたんだ」と笑った。

 ヒントは父・貢さんとの生前中に交わした会話にあったという。「試合中、どうしても我慢できない出来事が起こる。そういう時、監督としてどうしたらいい?と聞いたことがあったんだよな。その時、親父が『手をパチンとたたけ』と言ったんだよ」。貢さんは父親であり、高校や大学時代の監督。原監督にとって理想の指導者であり、助言を求めることは多かった。

 「この会話を思い出して、自分の太ももや尻をたたくようにした。そして3秒、ジッと下を向く。そうすると痛みも感じるし、冷静になれる。何かものに当たりたくなるようなこともないし、試合後の記者会見で後悔するようなことも言わなくなったんだよな」

 シーズン終盤、手や太ももを激しくたたく姿を何度も見た。試合後の会見は冷静さを装っていたが、その太ももは赤く腫れていたのかもしれない。計り知れない重圧やストレスと戦い続けた監督生活。「あまりに背負っていたものが大きいので。肩の荷が下りました」。穏やかな笑みが印象的だった。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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