丁寧な打撃。丁寧な取材

 【2月8日】

 「4番大山 丁寧に特打」-。そんな見出しが沖縄タイムスのスポーツ面を飾った。8日の朝刊である。通常メニューとは別に行われた昼時のフリー打撃を報じたわけだが、いい表現だ。

 ちなみに、同じ面のメイン記事はソフトバンク山川穂高だった。彼はウチナー出身だから地元紙が特集して当然だし、そうでなくとも、いま注目度が高い大砲。その大きな見出しは…

 「山川 丁寧にプレー」-。

 彼は取材陣に語ったそうだ。

 「1日、1日、丁寧にプレーしていくことが最大の目標です」

 山川と違い、大山悠輔のコメントに「丁寧」という言葉はなかった。けれど、沖縄タイムスの記事を書いた者の目には、きっと、阪神4番の打撃練習が「丁寧」に映ったのだろう。文中の書き言葉にそんな表現が出てくる。

 きのうは当欄も大山のランチタイム特打に触れた。しかし、僕は「丁寧」とは書かず、「余裕」という表現を使わせてもらった。7日の練習後、悠輔はテレビ、新聞用のインタビューで長めのコメントを残したので、それを目にした読者も多いと思う。それじゃ、こっちは彼に何を聞こうか。そんなことを考えながら悠輔を目の前にしたらふと、こんな問いかけが浮かんだ。

 悲願を達成し、迎えた2月。昨年までのキャンプと比べて心持ちは何か違うのか?それとも変わらないのか?

 悠輔は言った。

 「やっぱり、ちょっと違うところはあります。自分の中で少し余裕というものがありますしね…」

 ここでいう「余裕」とは、もちろん慢心の意ではない。 

 「でも…」と言って、彼は続けた。

 「例年と同じで、不安というか…やっぱり不安な気持ちというのは一生消えないと思っています」

 不動の4番としてシーズンを戦い抜いた自信が、心に幾ばくか余裕を生んでいる。ただし、新たな境地へ向かう不安や怖さは、プロの第一線に身を置く以上「0」になることはない。

 これまでプロ野球とサッカーの担当記者を経験してきたけれど、競技を問わず一流は「不安」を口にする。つまり、一切の「不安」を携えない一流はいないということである。

 第2クール最終日は、悠輔と雑談するタイミングもあった。こんがり日焼けしたその面持ちに充実の笑みものぞかせる阪神の4番である。が、いざタテジマを着れば、その重荷はグラウンド外にも…。そう。我々メディアの存在も時に「不安」に加担するかもしれない。これは虎の看板を背負った者にしか分からないもの。これまで彼にあまり聞いたことがなかったが、キャンプ中にしか聞けないこともある。

 日々、取材どう?きつい日もある?

 「こちらが答えたくなる質問をしてくださる記者の方には、しっかり答えようと思いますよ」

 悠輔はそう言って笑っていた。

 こちらも「丁寧」な取材を心がけなければ…。そうでなければ沖縄紙に大きく取り上げられるようになった彼に愛想をつかされる…かも。=敬称略=

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