阪神・湯浅のリハビリ支えた新井トレーナー 今季1軍で“再会”して感じた「前向き」な変化 生き生きした顔見て復活確信
国指定の難病「胸椎黄色靱帯骨化症」から復活した阪神・湯浅京己投手(25)のリハビリを、昨年2軍で担当をしていたのが理学療法士で球団トレーナーの新井雄太氏(35)だった。手術当日も寄り添い、誰よりも近くでその姿を見てきた。今季は1軍に帯同しており、右腕の昇格で“再会”。ともに歩んだ復帰への道のりを振り返りながら、湯浅の変化も明かした。
一番近くで見ていたからこそ分かる。昨季2軍でリハビリを担当していた新井トレーナーは、湯浅の変化に驚いた。「だいぶ明るい。元々前向きな性格だけど、より前向きな言葉を言うようになった」。昨年8月に胸椎黄色靱帯骨化症の手術を受けた頃と、1軍合流後を比べて印象を語った。
湯浅自身が「初めて野球をやめたいと思った」と話した、昨年4月19日のウエスタン・くふうハヤテ戦。4-1の九回に登板し1死も取れず、3安打3四球4失点で降板した。「その時期は体重も4キロくらい減って右足に力が入りにくくなり、原因が分からずに悩んでいた」と新井トレーナー。改善策を講じながらも思い通りにいかない。表情にこそ出さないが、考え込む姿があった。
湯浅が手術のために入院した遠方の病院に、新井トレーナーも向かった。湯浅から不安や恐怖も見て取れたが「絶対にうまくいくと、本人も私自身も信じていた。手術後、早く復帰するためにどうしようかと考えた」と前を向いて臨んだ。術後の1カ月検診にも付き添い、医師から「『思ったより早く良くなっている』って言ってもらって、本当に良かったです」と自分のことのように安堵(あんど)した。
リハビリは、普通に生活することや走るための治療からスタートした。鳴尾浜では毎朝入念にマッサージを行うなど、隣で多くの時間を過ごした。「自分の感覚が良くないことに悩んでいた」。しびれていた足の感覚は戻ったのに、野球の感覚につなげられない。ストレッチ中、地面を見ながら漏らしたのは体への悩みだった。
今季から1軍に帯同しているため、間近で見る機会は減った。それだけに、右腕の昇格で“再会”した時には違いを大きく感じた。治療がより良い投球を行うための内容に変わっていた。さらにリハビリではなく「パフォーマンスの部分で悩んでいた。だいぶ良くなってきたんだなと、表情などでも感じました」と目尻を下げた。
専門書で調べるなど、サポートのために力を惜しまなかった。同じ手術をした選手の所属する、他球団のトレーナーにも相談した。症例が少ない難病だが「チーム内外にいろんなスペシャリストがいる。その方たちと同じ方向を向いて、少しでも満足のいくパフォーマンスが発揮できるサポートをできたら」と話した。
湯浅はナイターゲームの日でも早起きして、治療やウエートなどに時間を費やすという。「改善途中でも1軍で抑えているのはさすが」と新井トレーナー。野球に対しての悩みや取り組みが増えたのは前進している証拠。何より生き生きした顔を見て確信した。(デイリースポーツ阪神担当・和泉玲香)
◆新井雄太(にい・ゆうた)1989年11月28日生まれ、神奈川県出身。関西医療大を卒業後、医療法人「Nクリニック」で勤務。2019年から阪神タイガースでトレーナーとして2軍のトレーニングを担当し、現在は1軍を担当。理学療法士の資格を持つ。
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