掛布雅之氏 決して曲げることがなかったこだわりの野球人生

 野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りを発表し、競技者表彰のエキスパート表彰として阪神で3度の本塁打王に輝き、「ミスタータイガース」として愛された掛布雅之氏(69)を選出した。

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 思えば45年ものつきあいになる。球界の若きスーパースターと新米のトラ番記者として出会って9年。同い年の掛布さんが33歳の若さで現役を引退した年以降は、記者仲間数人と「掛布会」を立ち上げ、35年以上にわたって旅行やゴルフ、飲み会を楽しみ続けてきた。

 初めて出張でチームに同行することになったとき、荷物トラックに積まれる掛布さん特注のバットケースに目を奪われた。長さ1・5メートルほどの頑丈なジュラルミン製のケースに美津和タイガー製の専用バットが大切にしまわれ、遠征先に向かっていった。

 一度、そのケースに新聞社のカメラマンが腰をかけているのを見た掛布さんが、年齢でいえば大先輩のそのカメラマンを怒鳴りつけたことがある。

 道具、服装、身の回りの物、行きつけの店、食べる物、何より4番打者としての生きざま…とにかくこだわりの野球人生だった。そして決してそれを曲げることがなかった。

 初めて会った頃の愛車はBMW633Csiという2ドアクーペ。世界一カッコいい車のように思えた。次はポルシェ911ターボ。練習後に引き揚げるポルシェのタイヤの幅広さに気づかず、車のそばで見送っていた後輩選手がつま先を轢(ひ)かれて大笑いした。

 豊中市の自宅のガレージには、いつも複数台の外車が、しかも次々にブランドを変えながら並んでいた。

 30代になって行き着いたのがベントレー。「俺も大人になったかな」。それが現役最後の愛車になった。

 殿堂入りの知らせを聞き、すぐにお祝いの電話を入れた。昔の掛布さんなら、何かひとことあったところかもしれない。しかし聞こえてきたのは今回の栄誉を素直に受け止める言葉だけだった。

 その話を向けると「オレたちももう70歳やで」と。

 カケ、おめでとう!(1980年~1983年、1989年阪神担当、デイリースポーツ元社長・沼田伸彦)

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