【佐藤義則氏の眼】阪神“頭”は迷わず高橋「初戦を勝つことが大事」日本一への道筋語る

 阪神の16年ぶりのリーグ優勝は、最後の最後、かなわなかった。しかし戦いは続く。紛れもなく、シーズンを大いに盛り上げた阪神。強さは本物であり、それを再び証明するチャンスが待つ。11月6日から始まるポストシーズン。ここからは短期決戦の連続となる。選手として、指導者として何度も日本一を経験した本紙評論家・佐藤義則氏(67)が、阪神が日本一となる条件を語った。

  ◇  ◇

 ポストシーズンに関して私の考え方は「各シリーズ、各ステージの初戦を勝つことが大事」というものだ。

 相手はまず巨人。そこを勝ち抜けば、ヤクルトが待っている。11月6日のCSファーストS初戦は、私なら迷わず高橋を持っていく。巨人は左から150キロをたたき出す高橋を、シーズンでも全く打てていない。勝てる可能性が非常に高い上、頭に持ってくれば、調整しつつ登板回数を増やすことができる。

 ファイナルSを勝ち抜いて、日本シリーズの初戦(同20日)も高橋。中4日で第5戦(同25日)というプランが描ける。

 “頭”が決まれば、あとは青柳、秋山らの安定感あるピッチャーを自在に配置できる。ガンケルや伊藤将らも含め、高橋を中心に中4日で回していくプランを練っていけば、先発陣は強力なものになるだろう。

 気をつけたいのが中継ぎだ。放っておいても、先発陣に見劣りしない充実の中継ぎ陣がいる。それで勝ってきた阪神としては、ここに関してはシーズンと何かを変える必要は全くない。

 「短期決戦だから満遍なく使う」というのはダメ。実際にやっていると、案外長く感じるものだ。となると万が一、先発が崩れて勝利が難しくなった場合は「捨てましょう」という考えを持った方が得策と言える。

 勝ち試合であまり登板しない投手を起用するべきで、勝ちパターンのピッチャーをどんな試合でも使うようだと、どこかでほころびが出ることが多い。

 あえて、シーズン中のリリーフ陣に何かを加えるとするなら、2軍で好調な左投手の抜てきなどによるワンポイントの左キラーだろう。例えば相手の代打をつぶしたい場面で機能すれば、岩崎、及川の負担は軽くなる。

 ここまで投手陣のことを話してきたが、阪神がCSを勝ち抜き、日本シリーズを勝ちきるにはバッターだ。投手力はある。一方で、楽勝ムードにも見えたシーズンであれほど苦戦し、最後はヤクルトに優勝をさらわれた敗因は、得点力に難があったためだ。

 取れる時、取りたい時に1点を取れない。特にリードしていて中押しをしたいケースでチャンスが来ても、例えば足のある選手が多いのに、そういう時に肝心の足が使えていない。細かなサインでの仕掛けも少なく、打者任せの結果の逸機、というものが非常に多かったように見えた。

 ガンガン打ち勝つ野球など、そういつもはできない。1点、1点を積み重ねていく。それが投手陣の強さを生かすことになる。さらに、その1点の積み重ねが、相手のスタミナを奪い、その先に大量点があるものだ。「欲しいところでの1点」。これが、日本一への道筋だ。

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