鳥谷 V弾呼ん打 1カ月ぶり快音出た!!
「阪神8-5広島」(6日、甲子園球場)
顔をあげると、そこには笑顔の阪神・鳥谷がいた。大声援で包み込んでくれた球場のみんなへ。帽子を取り、頭を下げる。勝利のあいさつの時間だ。「よかったです」。久しぶりに聞く大歓声。「H」ランプを、美しい赤色で照らした。
出番は四回だった。1死走者なしから木浪が左前へとはじき返すと、ベンチは代打・鳥谷を告げた。1カ月間、安打が出ていないベテランを大観衆は割れんばかりのエールで送り出した。その10球目だった。141キロの直球に反応すると、5月31日・広島戦以来の安打となる、左前への流し打ちが決まった。
時間だけが過ぎていくような気がした。約1カ月ぶりの快音。「これだけ打てなかったっていうか、これだけ試合に出られなかったことがないからね」。悔しさが、言葉を伝う。それでも準備を怠らなかった。練習前に一人黙々と走ることも、室内でのマシン打ちも前だけを見つめ続けた。いつか報われる。そう、信じていた。
骨が折れても、グラウンドに立ち続ける。それが当たり前だった。「トリ、試合に出られない気持ちが分かったな」。ベンチで後輩たちの姿を見つめ、浜中打撃コーチの言葉が胸に刺さったという。
「ずっと出られたことが、幸せなことだったんだなって。これがプロ野球選手なんだってね」
プロ16年目を迎えた今年、鳥谷は6月26日で38歳になった。これで今季8本目の安打。「よかったです」。喜ぶのはまだ早い。悔しい中で見たスタンドの景色は、ものすごくきれいだった。新しい風がまた、吹き始めた。