糸井「やったぁ」プロ初満弾&自己最多6打点 初球狙い撃ち9号 松中氏助言効いた
「交流戦、西武5-10阪神」(2日、メットライフドーム)
さすが虎の4番や!阪神の糸井嘉男外野手(36)が一振りで決めた。3-4の六回2死満塁から右翼席へ豪快な逆転弾。意外にもグランドスラムはプロ15年目にして自身初だった。しかもこの日挙げた6打点は自己最多というおまけ付き。猛虎打線は糸井に引っ張られ、今季最多の15安打を放ち、同最多の10得点でチームの連敗は4でストップ。この日敗れた巨人を抜いて3位に浮上した。
勢いよく一塁ベースを回ると、糸井が右拳を力強く掲げた。今季の過去8本塁打よりも、少し足早にダイヤモンドを駆ける。プロ15年目の初満弾。逆転勝利を導く一振りに、高まる鼓動は隠せなかった。4番が決めた、4番が止めた。自己最多6打点の大活躍で、交流戦初勝利に導いた。
「初球から甘い球が来たらいこうと、自分の中で意地が出たと思います。もう、やったぁと思いました」
試合後、照れ笑いで振り返ったのは六回だ。糸原の右前適時打で1点差に迫ると、福留の四球を挟んで2死満塁の好機。セオリー通りに初球を狙った。フルスイングした打球は、高々とドーム球場を舞った。一瞬の静寂後、悲鳴と歓声が交差して響くグラウンド。チームとして、2年ぶりの逆転9号満塁弾だ。
最後の一伸びを支えたのは、天才打者の一言だった。5月29日のソフトバンク戦。同チームのOBでテレビ解説に訪れた平成唯一の三冠王・松中信彦氏(44)と再会した。打撃練習後、三塁ベンチに向かう。「僕、どうですか?」。助言を求めた。1428安打、151本塁打。確かな足跡を残してなお、飽くなき向上心に原点を知る。松中氏は「左足の使い方」を伝えた。
「球に軸足のパワーを伝えた方がいいんじゃないかな、と。彼の能力からすれば、もったいない。もっと打てる。あの体ですから。浜風にだって勝てる」
広いヤフオクドームを本拠に352本塁打の大打者。左足の意識さえ変えていけば、逆方向への飛距離も伸びると力説し、36歳の進化に太鼓判を押した。「いい打者というのは、バットにボールが引っ付く感じで飛んでいく。彼なら甲子園でも30本は打てます」。前日1日は5安打完封負け。糸井はバット1本を持ち、悔しさをあらわにバスに乗り込んだ。勝ちたい一心だった。
「何とか連敗を止めるぞという、強い気持ちでいきました。何より勝てたことが、一番よかったと思います」
5月31日のソフトバンク戦では攻守で精彩を欠き「自分のせいで負けました」と敗戦を背負ったが、自らの力で取り返して見せた。FA移籍2年目。「勝つことが全てだ」と信じる。だからこそ試合後は喜び一瞬に、続く戦いに気持ちを切り替えた。「あしたも勝てるように、意地を見せたいと思います」。もう、笑みはない。勝利のためにフルスイングを続ける。もっと強く、もっと遠くに。
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