藤浪がTOKYOのシンボルとなることを願って
「ヤクルト0-8阪神」(5日、神宮球場)
選挙妨害になりかねないので執筆を控えていた。けれど、きょう解禁する。果たして東京都民の皆さんは、このたび約291万票で首長に選ばれた女性が大の阪神ファンであることをご存じだろうか。新都知事の生家が虎将の自宅から目と鼻の先であることなど知るよしもない、だろう。
小池百合子は兵庫県芦屋市出身。彼女が通った芦屋市立岩園(いわぞの)小学校には昔から阪神関係者のご子息がわんさかいる。甲子園まで車で15分のセレブリティーな住宅街で育ち、星野阪神が優勝した03年、彼女は今岡誠(現2軍打撃兼野手総合コーチ)の後援会長まで務めた筋金入りの…これ以上書くと、G党のお怒りを買いそうなのでやめておく。
前任の都知事は公用車で東京ドームまで駆けつけ、家族で巨人戦を観戦していたようだが、ある意味、ほほ笑ましい話だ。石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一…最近3代は生粋のG党だという。そりゃそうか。例えば、ACミランのファンがローマ市長に立候補するなんてあり得ない話(だと思う)。そういう意味で都民はとっても寛容なのかもしれない。
2020年、東京五輪・パラリンピックで野球が五輪競技に復活するという朗報が飛び込んできた。その晴れ舞台、誰もが大谷翔平が日本のエースだと想像するだろう。でも、開催都市の女性リーダーがその座に期待するのは、もちろん、藤浪晋太郎であるはずだ。
新都知事の政治思想は傍らに置くとして、その勝負師としての信念に注目してみる。実は13年前、小池がデイリースポーツに登場したことがある。03年元日の紙面で、くしくも都知事選を戦った鳥越俊太郎らと猛虎愛を語り合う座談会が開催され、そこで彼女はこんな言葉を語っている。
「勝つか勝たないかの問題ではなく、信じること。選挙だって負けると思って誰もやらない。勝つと思ってやるんです。(負けても)必ず、次がある」
小池が知事に就いて初めて都の管轄内で虎が戦った夜、藤浪が躍動した。2カ月ぶりに勝った22歳について、金本知憲は「まあ長かった」と笑った。今季、藤浪に最もスポットが当たったのは、例の“161球事件”。金本が課した懲罰の是非を問う声も上がったが、藤浪自身、後に金本に明かしている。「自分は最後まで投げるつもりでした」。真意はともかく、両者の心底に「信」の文字があればいい。
「日本のエースに!大きく育て!」。これは藤浪入団時に金本が色紙にしたためたエールだ。背番号19が復調の足跡を記した神宮の夜、虎党知事の期待も膨らむ。4年後、彼がTOKYOのシンボルになっていることを願って。=敬称略=(阪神担当キャップ・吉田 風)
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