福留2000安打 次は金本虎を頂点に

 「広島4-2阪神」(25日、マツダスタジアム)

 阪神・福留孝介外野手(39)が、広島戦の六回、岡田から二塁内野安打を放って日本選手6人目の日米通算2000安打を達成した。日本で2度の首位打者、侍ジャパンで世界一にも輝いたエリートだが、ミスに泣いた苦しい若手時代を乗り越えて積み重ねたプロ野球での1502安打、米大リーグでの498安打だ。次は若虎とともに戦い、金本虎を頂点に導く。

 あの夜と違う。福留は広島の大歓声を全身に浴びた。新井、鳥谷から記念の花束とボードを受け取り、控えめに頭上へ。黄色と赤色に染まるスタンドとベンチに向けて、丁寧に何度も頭を下げた。

 「ホッとしているというのが一番。カープファンの皆さんも声援してくださって、ライトに行ったときもおめでとうと声をかけてくれた。ビジターですが幸せな気分でした」

 生き様(ざま)を示すような一打だ。4点を追う六回2死二塁。岡田の直球を一、二塁間へ。横っ跳びした菊池のグラブをはじき、しぶとくHランプをともした。直前四回の第2打席はカーブを呼び込み右翼線二塁打。「オレは中距離打者」という福留らしい安打でリーチをかけると、足踏みせず金字塔に到達した。

 10代から、スポットライトを浴び続けた。名門PL学園から日本生命を経て中日入団。五輪、WBCにそれぞれ2度出場し、世界一を経験した。夢を追って海へ渡った。エリート街道を歩んできたように映るが「すべてが順調だったわけではない」と言う。金本阪神超変革元年。レギュラーを目指して奮闘する若手の姿に視線を向けると、17年前の記憶が鮮やかによみがえる。

 「オレも初めて外野をやったとき、最初の初のプレーはサヨナラエラーやからね」

 中日時代の99年9月4日。蒸し暑い広島の夜だった。0-0の九回2死一、二塁。あと1死で延長戦という場面で、左翼を守っていたルーキーは平凡な飛球をポトリと落とした。外野出場は4試合目。まさかのサヨナラ失策だった。

 「ウオォー!、クソッ-!」

 試合後、目を真っ赤に充血させ、声を荒らげた。期待に応えらない自分に怒りと悔しさが募る。それでも、翌日のスタメンには福留の名前が記されていた。

 「お前もうダメだとか、もっとやれ!と言ってもらった方が楽だったかもしれない」

 いくらミスを重ねても星野監督から怒鳴られることはなかった。「自分が下手なんだから。うまくなるためにやるしかない」。無言のプレッシャーは力に変えた。レギュラーをつかむと、闘将がチームを去った翌年、試練が待ち受けていた。

 「バットも出なかったから。あのヒットを打って楽になった」

 02年9月29日巨人戦(東京ドーム)。三回無死一塁、ヒットエンドランのサインに体が自然と反応した。上原から一、二塁間を破る右前打。10打席連続無安打のプレッシャーから解放された瞬間だった。その年、自身初タイトルとなる首位打者を獲得し、松井の三冠王を阻止した。プロ初安打、サイクル安打、メジャー初本塁打…。どんな劇的な一打より誇れる1本だ。

 「手羽先の骨も飛んできたから。今年はヤジが少ないな(笑)」

 アメリカでもまれ、阪神1年目は打率1割台の不振に苦しんだ。左膝にメスも入れた。過去は振り返らない。前だけを向いて未来を切り開いてきた。

 「もう個人的な数字はいまさら追いかけることはない。このチームが勝つこと。それが僕の一番の目標です」

 若いチームを強くしたい。もう一度仲間と美酒を浴びたい。達成感に浸りつつ、新たな夢を追いかける。

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