良太、タカ侍摂津から人生初の満塁弾
「交流戦、阪神9‐5ソフトバンク」(18日、甲子園)
19年間の野球人生で初めて味わう身震いだった。「熱くなれ!」。阪神のスローガンを地でいく男が、ここ一番で熱くなった。メーンイベントは初回だ。西岡の先頭打者弾の後、安打と敵失、四球で1死満塁とチャンスが広がり、6番良太の前におぜん立てされた。
「剛が打って、みんながつないで押せ押せの雰囲気で立たせてもらった。きょうは気持ちじゃないかな。相手どうこうよりも、開き直りというか、やってやるという気持ちのほうが強かった」
2ボール1ストライクから浮いた直球をとらえ、「経験がない」という満塁本塁打を左翼席に運んだ。相手は昨季沢村賞投手の摂津。今季もこの試合前まで6試合で防御率1・76を誇ったエースを攻略すべく戦前にデータを整えたが、数字、軌道…すべてを「無」にして、来た球をフルスイングで仕留めた。
打順が5番から6番に下がった前夜、16打席ぶりにHランプをともした。この日は三回にも安打を放ち2安打。昨季の満塁機打率は・125で今季も・200と、実は走者を塁上に3人背負う場面は得意ではないが、復調の波が後押しした。
70日前の感動が忘れられない。甲子園でロッテとのオープン戦を戦った3月8日。試合後に胃袋を満たした近所の焼き肉店で鳥肌が立った。店内の液晶テレビが映し出していたのはWBC2次ラウンドの日本対台湾戦。能見と王建民の先発で始まった準決勝進出を占う熱戦に目を奪われた。1点を追う九回2死から四球で出塁した鳥谷が盗塁。井端の同点打で生還した虎の主将は絶叫し、普段見せない鬼気迫る形相で、摂津、内川、松田ら「侍」の仲間たちと抱き合っていた。
「トリさんも、能見さんも、すごい顔をしている。僕は代表の経験はないけど、こっちが想像もつかないようなプレッシャーなんだろうな…」。鉄板で好物のハラミが何度も焦げついたが、しばらくはしを止め、その闘志をビシビシ感じ取った。
摂津から記念弾を放った日に、チームは内川に2発、松田に1発を浴びた。羨望(せんぼう)のまなざしを向けた侍戦士との真剣勝負に胸が高鳴る。良太の一撃は、鷹の役者が描いた追撃弾より、はるかに鮮烈だった。
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