【集中連載】横綱日馬富士誕生(上)

 大関として勝ち星が2桁に届かないことも多かった日馬富士が、角界の頂点へ上り詰めた。横綱に対する意識改革、その裏に隠された思いなど、「誕生 第70代横綱日馬富士 大相撲新時代へ」として、3回にわたって連載する。

 本気で綱を目指しているのか‐。日馬富士の綱とりについて、周囲の関心はその一点に注がれていた。

 これまでは、必ずしも強い大関とは言えなかった。22場所で優勝4回、10勝以上は11回(途中休場1回)。大関を10場所以上務め、平成以降に誕生した横綱は4人いるが、旭富士(大関17場所で優勝3、10勝以上は12回)、貴乃花(同11場所で優勝5、10勝以上10回)、若乃花(同29場所で優勝4、10勝以上20回)、武蔵丸(同32場所で優勝5、10勝以上25回)と比べて、特に2桁以上の星について隔たりがある。

 大関は2場所連続で負け越せば関脇に陥落するが、直後に10勝すれば復帰できる。横綱は不振に陥れば引退せざるを得ない。月給は横綱が282万円で、大関は234万7000円。三役の169万3000円、平幕の130万9000円を見ても、大関は“おいしい”地位なのだ。

 かつて日馬富士は「名大関を目指す」とコメントした。兄弟子の安美錦も「大関で満足した感はあった」と証言する。だが、全勝優勝した名古屋場所から「毎日横綱を夢見ながら起きる」「男として生まれたからにはNo.1を目指すのは当然」と積極発言を連発した。6月の合宿から、故障を抱える両足首や右手首の状態が良化し、稽古量も体重も増し、自信をつけた。今場所前には自己最高の133キロを計測し「うれしい。変わらず動けているし」と自信をみなぎらせていた。

 もっとも、3場所前の夏場所は8勝7敗。今後は高い次元の安定感が要求される。

 同じ軽量横綱だった九重親方(元横綱千代の富士)は「オレのマネをしたらいい。オレは小さい体だから横綱になれた。小さいから速さとうまさを伸ばせた。これなら負けないという型をつくること」とエールを送る。伊勢ケ浜親方は「このまま140キロまで大きくなってほしい。相撲も変わる」と話す。

 横綱に上り詰めれば短命に終わる‐。角界周辺から上がる声を覆すために、さらなる進化が求められる。

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