「Ｗ杯アジア最終予選、日本３-０オマーン」（３日、埼玉）

　勝利の瞬間、ガッツポーズが出なかったのは、プラン通りの試合展開となったからだろう。６万超の大観衆の前で演出して見せた完全勝利。「多くのサポーターの方たちがいて、ベンチから見る風景は格別だった。描いていた通りのゲーム内容だったと思う」。日本代表アルベルト・ザッケローニ監督（５９）の表情には、満足感が満ちあふれていた。

　過去２大会のＷ杯最終予選の初戦は、いずれも１点差の辛勝。苦戦も必至かと思われたが「予想通り３次予選の時のように、中央を固めてきた」という相手を、立ち上がりから攻め続けた。先制点のＭＦ本田には「クロスにあのタイミングで入っていけと話していた」と助言。狙い通りのゴールに、拳を固く握るガッツポーズを披露し、守備面でも「シュート１本しか打たれなかった」と完勝を振り返った。

　ピッチ外でのタクトも冴（さ）えた。「昼食後、いつもは談笑してから部屋へと戻る選手も多いが、この日はすぐに部屋に戻っていた。集中しすぎているというか、緊張しているなと思った」。試合前には選手に言葉をかけて、大一番に臨む精神状態をつくり上げた。

　Ｗ杯本大会に向けて、大きな１勝。それでも「この勝利を今後どう活用するかがキー。３‐０で勝てた、ではなく、どうして勝てたか自分たちで探っていく必要がある。これからもチームには更なる成長をリクエストしていきたい」と引き締める。はるかなるブラジルへの航路は、順風を帆に受けて発進した。