【野球】栗山監督、プロで生きている塾講師アルバイト時代の教え

 チームを10年ぶりの日本一へと導いた日本ハム・栗山英樹監督(55)が、今オフ、初の正力賞を受賞した。その年の最もプロ野球界の発展に貢献した人物に贈られる賞辞の授与に栗山監督は驚きの表情を浮かべていた。

 「ファイターズがやってきたことが、今年の日本一につながったことで取らせて頂いた賞。まさか自分が取れるなんて」と感無量といった表情だった。

 今季手腕が最高の賞を手にするにふさわしい指揮ぶりと評価されての受賞。固定観念にとらわれない采配、選手の能力を引き出し、日本ハムの強さ、魅力を世間に知らしめた。今季は二刀流、大谷に対する起用法が大きく注目を浴びたが、大谷だけではない。増井への先発転向案や、シーズン当初は中継ぎだったマーティンの抑えへの配置転換、宮西、石井ら中継ぎ陣の安定した成績を引き出せたのは、本人が納得した上で適した采配を奮った結果でもある。

 選手が力を出しやすい環境を-。今年を振り返ると、選手との対話重視の姿勢が結果へとつながっているとみた。この概念を念頭に置いてるからこそ、選手は起用される意図を理解し、試合に臨む。球団によっては選手の入れ替えはマネジャーの伝達のみで終わる球団もあるが、栗山監督は違う。2軍落ちの選手には直接本人と対話し、理由を告げる。入れ替えに納得していない選手に食ってかかられたこともしばしばあるという。「なぜ、落とされたか分からないといけない」。理解させ、今後1軍で活躍する上で何が足りないかを伝える。それを理解した選手は課題を克服して1軍に上がる。そのような形が日本ハムでは構築されている。

 熱血指導で知られる栗山監督の指導法の原点は-。国立大の東京学芸大卒でプロ入り前は教職の道へ進むことも考えていた指揮官。学生時代は学習塾講師のアルバイトが今の指導姿勢にもつながっているという。現在のような学力別クラス編成が、進んでいない郊外の個人塾で教べんを奮っていた当時の栗山監督。学力のある子から、勉強を苦手にする子までを一手に引き受けていた。「できない子を孤立させないように必死だった」。中学生への数学の指導時、分数の計算ができない生徒には居残りマンツーマン指導をした経験もあった。そういう生徒が成績アップにつながった時は何事にも代えがたい喜びにつながったという。

 現チームに立ち返り「うちは全員が貴重な戦力」という栗山監督。落ちこぼれを一人も出さない。その姿勢はプロでの指導でも同じである。塾講師時代に培った教えの信念が、プロの指導者で開花し、偉大な賞の受賞につながったと思える。(デイリースポーツ・水足丈夫)

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