【ライフ】重低音にやみつき!ウーハー上映

左右に設置された高性能音響で迫力満点の「ウーハー上映」(塚口サンサン劇場提供)
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 映画は“鑑賞”するものから“体感”するものへ-。大手シネコンではここ数年、上映手法が画期的に進化している。天井から床までいっぱいに広がった巨大スクリーンによる臨場感が売りの「IMAX」、映像に合わせて座席が揺れ、水しぶきやにおいまで噴出される「4DX」や「MX4D」と、テーマパークのアトラクション顔負けのものばかりだ。だが、これらの“体感型シアター”に勝るとも劣らない、一風変わった上映が兵庫・尼崎市で楽しめると話題になっている。今年5月に「塚口サンサン劇場」に常設された、重低音に特化した高性能スピーカーを使う、その名も「ウーハー上映」。しかも、追加料金なしの通常料金で観られるお得さもうれしいところだ。百聞は一見にしかず!ということで、音にとことんこだわった上映を体感してきた。

 取材日にウーハー上映されていたのは「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」。人気脚本家クドカンこと宮藤官九郎が監督を務め、長瀬智也や神木隆之介ら豪華俳優陣が共演した話題作だ。開始直後から数分、特に変化もなく、いたって普通の上映なのでは?と疑い始めた矢先のことだった。神木演じる修学旅行中の高校生らを乗せたバスが転落するシーン。「ドォーンッ!」。ガードレールを突き破り、崖から落下していく衝撃音から一変した。聴覚のみならず、全身に重低音が襲ってくる感覚。体全体が震えてくるような大音量に圧倒された。長瀬演じる赤鬼「キラーK」が率いるバンドの“地獄”でのライブシーンも、高性能音響・ウーハーがさらに威力を発揮。むやみに音量が上げられているのではなく、重低音によって音の幅が広がっているように感じられる。その迫力は、まるで音楽ライブを観ているかのような錯覚を起こすほど。「セリフの部分は一般的な音響設定で、目立たせたい場面を“重低音”にしています」。塚口サンサン劇場の営業担当・戸村文彦さんも胸を張る。

 ウーハー上映のきっかけは、大ヒットした映画「マッドマックス怒りのデス・ロード」だ。アクションシーン満載の作品をより楽しんでもらうべく、音響の専門家に相談。野外フェスでも使用される高性能スピーカーのウーハーをレンタルし、昨年8月に初めて上映した。その後も、レンタルしながら定期的に上映を開催。観客からの好評を受けてことし5月、音響機器の更新に合わせて高性能ウーハーを本格導入させた。「かなり奮発しました」と戸村さん。さらに、今まで使用していたスピーカーを修理して別のスクリーンに「Extraウーハー上映」も常設した。新設されたウーハーよりも性能は劣るものの、ピンポイントでの大音量には効果てきめん。ホラー映画を上映した際には「お化け屋敷みたいだった」との反響があったそうだ。

 ウーハーを取り入れたといっても、あくまで作品の魅力をより引き立てるものという考えが前提にある。戸村さんとウーハーの音響設定を担当する劇場スタッフを中心に、作品をチョイス。営業時間前後の深夜や早朝に“試写”するなど検討を重ねて実際の上映にいたる。戸村さんも「私たちも勉強中です」と、劇場スタッフ一体となって試行錯誤が続いている。来月には、今夏に話題を席巻した「シン・ゴジラ」がウーハー上映される予定。DVDやブルーレイで映画を観るのは、やっぱりどこか味気ないという方、最高の重低音で名作をご堪能あれ!(デイリースポーツ・佐藤敬久)

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