【ライフ】愛着スニーカーの靴底が甦る

愛着のあるスニーカーを、見た目はまだ大丈夫なのに、泣く泣く廃棄した経験はないだろうか。すり減ってしまったり、割れてしまったり、カチカチに固まってしまったり…。靴底(ソール)の不具合が理由であることは珍しくない。

 靴底は、履き続ければ摩耗してくる。そうでなくとも、10年もすれば経年劣化によりゴム部分の強度が落ちボロボロになってしまう。紳士靴やブーツ、ハイヒールと異なり、一般的な靴修理店では、スニーカーのソール交換を行っていない店舗が大半だ。また、交換が可能でも、費用が高額になるケースが多い。

靴職人によると、スニーカーのソール交換が一般的にならない理由には、以下のことが考えられるという。

(1)スニーカーはソール交換を前提に設計されておらず、手間がかかる。

(2)買い換えた方が安価になる場合が多い。

(3)地面に接する靴底部分の硬質ゴムは代替が効くが、ソールの中間部分のウレタンはメーカー外にパーツがなく、新品と同じ状態には戻せない。他のゴムやスポンジ等で整えても、履き心地やクッション性といった性能は格段に落ちてしまう。街履き用は別として、例えばランニングシューズやバスケットシューズを使う競技者に、ソール交換は勧められない、という。

 「スニーカーは履きつぶすもの」-。これは製品の特性上、致し方ない側面があるようだ。

 ただ、一部ではソール交換のサービスを行っているメーカーもある。とりわけ、1893年にフランスで発祥したブランド「PATRICK」は、非常に積極的だ。

 PATRICK公式サイトのトップページ下に「リペアについて」という項目があり、ソール交換のサービス内容が案内されている。対象モデルは約30種類。ソールを除く本体部分(アッパー)が本革(レザー)製であることに限られ、生地や人口皮革製は対象外となっている。交換は全国の正規販売店を通じて受け付け、預かり期間は約5週間、料金は8000円、と記載されている。

  国内でのPATRICK販売を受け持つカメイ・プロアクト株式会社(東京都港区)の広報担当者によると、同サービスは2011年春夏シーズンから実施。1990年に国内生産が開始された点を挙げ「愛着あるスニーカーを長く履き続けるために、日本製のメリットを考えリペアを開始いたしました。職人さんの技術があってこその企画と感じております。当初スニーカーは使い捨てのイメージが大半でしたが、そのイメージを払拭するために、革の商品を多く企画し、張り替えサービスを実施しました」と説明する。

 現在では過去モデルを含め全体の約20%がソール交換サービスの対象になっている。本体部分がレザー製モデルに限っている理由は「ソールをはがす際に本体が衝撃に耐えられず破損してしまう可能性があり、愛着あるシューズを傷つける恐れのあるモデルは残念ですがお断りしております」とのことだった。

 リペアサービスの開始以降も対象モデルの追加や、ソール交換と同時に靴本体へのクリーニングを行うなど、内容の向上を図っている。申し込みの多いモデルはSANGER(公式サイトオンラインショップ価格税抜17800円)、MARATHON-LE(同16000円)。「革の風合いは年々表情を変え、履き心地を良くし足元にフィット感を与えてくれます。ファンの方々から大変喜んでいただいております」と、手応えを感じている。

 スニーカー好きにとっては、ソール交換サービスが他メーカーにも広がってほしいと願うばかりだ。PATRICKのリペア申し込みは春が最盛期だという。これから始まる夏。リペアを終えたお気に入りのシューズが、街を元気よく歩いていくのだろう。(デイリースポーツ・山本鋼平)

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