【スポーツ】稀勢綱とりに2つの追い風

 大相撲夏場所は、いよいよ5月8日、東京・両国国技館で初日を迎える。先日の番付発表では新関脇の琴勇輝や勢、新小結の魁聖らが話題になったが、一番の注目は大関稀勢の里が初優勝できるか、さらにその結果、一気に今場所で横綱昇進を果たすか-だろう。

 先場所は13勝で準優勝。優勝したわけではないので、場所後の横綱審議委員会では、今場所が綱とりになるかどうかについて、まったく話題にならなかったが、今場所で全勝優勝するなど高い成績を残した場合、さかのぼって綱とりの起点たりうる雰囲気は残した。八角理事長(元横綱北勝海)も「(今場所で)内容、結果ともに相当いい雰囲気が出てくればね。まずは横綱戦で頑張ることが大事」と今場所の昇進に含みを残した。

 こういった状況下で迎える今場所。審判部の友綱副部長(元関脇魁輝)は「初日から連勝を続けて終盤戦に入ってくれば、そういう(昇進の)話も出てくるかもしれない」と私見を述べた。昇進の話が出てくる基準としては、15戦全勝優勝か、いい内容の相撲で3横綱を下しての14勝優勝だろうか。いずれにしても優勝は必須条件になる。

 こうなると、問題は稀勢の里がこの条件をクリアできるか否か。「先場所は左をおっつけてからの左差し、左をぶつけてからの左差しがよかった。立ち合いはこの2パターンで十分。腰高の悪いクセも見られなくなったので、相撲に力強さと安定感が出てきた」(友綱副部長)と実力的には旬の時期を迎えている。あとは課題と言われ続けてきた、大事な一番での精神面の弱さ、立ち合いの甘さを克服できるか。

 実は幸運にも今場所は2つの追い風が背中を押してくれそうだ。ひとつは今場所が綱とり場所にはなっていないこと。綱とり場所となれば、先場所の琴奨菊がもろくも崩れたように、相当な重圧がかかる。だが、今場所はいわば出来高次第。素晴らしい成績を残した場合のみ、後付けで綱とり場所に変わるわけだから、苦手な序盤戦もノープレッシャーでいける。

 2つめは番付発表後の力士会で審判部首脳が立ち合いの正常化を要望し、改めない力士には厳罰を下す方針を伝えたことだ。稀勢の里が白鵬、日馬富士に負ける場合、立ち合いの駆け引きから劣勢で、自分の立ち合いをさせてもらえない場合が多いが、審判部はこの駆け引きのようにタイミングをずらす立ち合いも厳罰の対象にしている。つまり、今場所は白鵬、日馬富士が駆け引きを封印せざるを得ず、稀勢の里に自分の立ち合いができるチャンスが生まれるということだ。

 先場所の千秋楽、八角理事長はこう話している。「綱とりへの課題は横綱との立ち合いだろう。相手はタイミングをずらしたり、じらしたりといろいろやってくる。そこで焦ったり、緊張したらいけない。それから大事な時に力を出せる精神面だね」。この2つの課題を2つの追い風が吹き飛ばす今場所こそ、実は千載一遇のチャンス。初夏の両国に巻き起こる旋風に期待したい。(デイリースポーツ・松本一之)

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