【レース】今後が楽しみな“2代目”

 2013年の当歳セレクトセールにおいて高値で取引されたディープインパクト産駒による“5億円マッチ”として、レース前から注目を集めた8日の京都5R新馬戦。結果もその2頭、サトノダイヤモンド(牡2歳、栗東・池江泰寿厩舎、税込み2億4150万円)とロイカバード(牡2歳、栗東・松永幹夫厩舎、同2億5200万円)のワンツーで決着したのは、競馬ファンならご存じだろう。

 一方、この話題の陰に隠れる形となってしまったものの、個人的にオッと思い、懐かしさもこみ上げたのが同日の東京5R新馬戦だった。1着でゴールを駆け抜けたのはキラージョー(牡2歳、栗東・藤岡健一厩舎)。単勝23・1倍で16頭立ての7番人気という評価だったが、見事に逃げ切りでVを飾った。

 降雨の影響により舞台は稍重馬場の芝1800メートルで、前半5F通過は65秒3のスローペース。1分52秒1の走破時計は目立たず、高速馬場が控える競馬への対応力は全くの未知数だ。とはいえ、ラスト2Fをともに11秒0の快ラップでまとめて3馬身半差の圧勝。着差のつきにくい遅い流れでのこの結果は、フロック視するべきではない気もする。

 「素晴らしいもの+冠名」を由来とするこのキラージョーという馬名、実は“2代目”だ。86年のダービー馬ダイナガリバーを父に持つ“初代”のことは、紙面で何度も重い予想印を打ったこともあってよく覚えている。

 97年1月に美浦・諏訪富三厩舎からデビュー。最初の4戦は6、14、5、11着と掲示板に載るのがやっとだったが、柴田善臣騎手を新たに鞍上に迎えた5戦目に一変。5番人気で初勝利を挙げると、続く初芝の山桜賞も9番人気で完勝した。

 当時30歳だった柴田善は、毎日のようにこのキラージョーの調教に騎乗。「この馬を仕上げて、ダービーに行きたい」-。しかし、出走を予定していたトライアル・青葉賞の最終追い切りで状況は暗転した。ケイコの止め際で脚元に違和感を覚えたため、美浦Wコースの向正面で下馬。重症ではなかったが、青葉賞はもちろん、ダービー(サニーブライアンが2冠達成)参戦の夢もついえた。

 結局、現役時代は12戦4勝。重賞は未勝利に終わったが、秋に復帰後、900万下と1600万下を制して3歳のうちにオープン入りしたように能力は高かった。勝負事でタラレバは禁句ながら、あの3歳の春、旬の時期に無事だったなら、果たしてどんな走りを見せたのだろうかと思わせる一頭ではあった。

 ジャパンスタッドブックインターナショナルのホームページを検索すると、かつて使用された馬名を再度使う場合のルールが記されている。大まかに言えば、G1勝ち馬と同じ馬名は付けられない一方で、「中央、地方競馬から登録が抹消された日の属する年の翌年1月1日から4年(G2、G3勝ち馬は9年)を経過した日」から再使用が可能となる。

 近年でいうなら、ダービー馬のキズナやワンアンドオンリーは同名馬がかつて存在。また、先週のエリザベス女王杯馬に出走したラキシスに至っては3頭目だ。ただ、それぞれオーナーは異なる。

 一方、キラージョーは初代も2代目も同じオーナー(河内孝夫氏)で、生産者(中地康弘氏)も一緒。この馬名への思い入れや、馬自身への期待の大きさが伝わってくる。ちなみに、純粋な2代目=同オーナーによる馬名再使用の活躍馬には、有名なところではエルコンドルパサー、ダービー馬ならエイシンフラッシュなどがいる。

 キラージョーは23日東京の東スポ杯2歳Sに特別登録がある。出走となれば一気のメンバー強化。乗り越えるべきハードルはかなり高いが、果たして結果はどうだろう。ハーツクライの子らしく、ここ一番でディープインパクト産駒の人気馬を負かすシーンを演じるようなら痛快かも-。長い目で、その走りを楽しみつつ見守っていきたい。(デイリースポーツ・野田口 晃)

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