小さな侍の挑戦~仁志ジャパン始動

 7月4日-。小雨が降り続く空の下に、小さな侍たちの元気な声が響き渡る。「第3回WBSC U-12ワールドカップ」(7月24日~8月2日・台湾)に出場する侍ジャパンU-12代表が、都内で1次合宿を行った。

 昨年のアジア選手権に続き指揮を執るのは、巨人などで活躍した仁志敏久監督。わずか2日間の日程という今合宿の目的は「まずは顔合わせという感じ。まだみんな、緊張しておとなしいので慣れていかないと」。その中でも仁志監督のこだわりが随所に見られた。

 アメリカ、キューバなどの強豪国がひしめき合う中で、前回大会の3位を上回る成績が期待される。ただ、Uー12というカテゴリーに求められるのは勝利だけではない。将来への「育成」という側面も重要となってくる。

 この合宿ではフリー打撃や投球練習、守備練習といった項目のほかに、フィジカルトレーニングも取り入れられた。もちろん野球の技術は必要だ。だが、それを取り込む『器』ができていなければ、技術は身につかない。

 「僕らもそうだったが、野球選手は野球しかやらない。だけどサッカーをやっている子供たちは、フィジカルトレーニングもしっかりとやっている。今のウチから反射的な動きを鍛えるのはプラスになる。彼らの伸びしろを残してあげないと」

 そのために大事な時期こそが、この年代だという。「プロの若い子や大学、社会人の選手も見てきたけど、一番大事なのはこの時期。体を作らず身体能力だけでやっていると(能力の)天井が見えてしまう。能力の幅を広げていってあげたい」。仁志監督の言葉は次第に熱を帯びていた。

 勝利と育成の両立は簡単なことではない。この世代はリーグによってルールも異なる。例えばリトルリーグでは、走者の離塁は投球がホームベース上を通過してから。つまり走者でリードを取る、投手がセットポジションで投げるという経験がない選手もいるのだ。

 大会までの短期間に、同じ野球を共有するだけでも大変な作業。それでも仁志監督は「難しさはない。こちらが伝え方を決めておけば彼らに伝わるし、この年代の子供たちは頭にさえ入れておけばいい。技術の形を固める必要はない」と話す。

 いずれ、この小さな侍たちが甲子園を沸かせ、プロの門をたたき、トップ代表へと上り詰める日が来るかもしれない。U-12代表は、その第1歩だ。

 「選手たちの力を引き出した上で勝たせてあげたい。将来的なステップになればいいと思う」と仁志監督。知識も経験も、そして勝利も、彼らが手にするすべてが、侍ジャパンの大きな財産となる。(デイリースポーツ・中田康博)

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