手倉森監督が迎える4度目の「3・11」

 あの日から4度目の「3・11」に、意義深い一戦を控えている人物がいる。サッカーU-22日本代表を率いる手倉森誠監督だ。2016年のリオデジャネイロ五輪出場を目指す同代表を率いる指揮官は、27日から五輪のアジア1次予選を兼ねて行われるU-23アジア選手権予選に向けた壮行試合として、11日にU-22ミャンマー代表との親善試合に臨む。

 いわゆる“リオ世代”と呼ばれるこの代表が発足したのは14年1月。ここまで12試合を戦ってきたが、今回のミャンマー戦が、国内での最初の試合となる。3日に行われたメンバー発表会見に登壇した指揮官は「まずは手倉森ジャパンの国内初お披露目なので、われわれ代表選手にはこれからの日本サッカーを発展させるんだという思いをピッチに注いでほしい」。また、13年までの6年間、J1仙台を率いていたこともあり「東日本大震災のあった日にゲームができる。僕は震災当時、被災地チームを率いた監督でした。それから多くのものを失った中で、多くのものを得られたと感じています。それは人としてのパワー、そういったものをもう一度東北の復興のために、力を注ぐ思いと、まだ苦しんでいる人たちへ勇気や力を届けられるような試合ができればと思います」と語った。

 U-23アジア選手権予選を前に「壮行試合はどうするか」と聞かれた手倉森監督は「ぜひ試合をしたいと」と即答したという。「当初の予定では3月11日か12日か定かではなかったのですが、3月11日にしてもらい、候補地も鹿島、仙台、神戸などが挙げられていましたが千葉になりました。場所はどこであれ3月11日に試合をすることに意義がある」。最終的に決まった千葉は、震災直後に練習場が確保できない中で、場所を提供してくれ地。「こういった縁もあって、僕にとってもすごく意義があるなと思います」と語った。

 東日本大震災から4年。時間は着実に経過しているが、いまだ仮設住宅で暮らす人々も多く、被災地の復興はまだまだ道半ばなのが現状だ。青森出身で、震災当時から仙台在住を続けている指揮官も、被災者の1人。だがそれでも手倉森監督は「震災を風化させないと皆さん言っていますけれど、実際に苦しさやつらさを思い出すだけではなく、あれから頑張っている自分を鼓舞する日になれば。そんなメッセージが伝わればいいなと思います」と前を向く。

 胸に熱い心を秘める指揮官がピッチに送り出す、若きサムライのプレーが、人々の心に届くことを期待したい。(デイリースポーツ・松落大樹)

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