「深夜食堂」アジア人気、支持の理由は

アジアで人気爆発中の「深夜食堂」ⓒ2015安倍夜郎小学館/映画「深夜食堂」製作委員会
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 「孤独のグルメ」「女くどき飯」「花のズボラ飯」…今や人気コンテンツとなった“飯(めし)ものドラマ”。その先駆け的存在が09年に第1弾を放送した「深夜食堂」だ。31日には劇場版の公開が控える、この作品。韓国や台湾、中国などアジア圏では日本以上の人気という。原作本が売れ、ドラマは同時放送。リメーク権が売れたことも分かった。決して派手とは言えぬ本作が国内外で支持される理由を遠藤日登思(ひとし)プロデューサーに聞いた。

 今でこそ複数の作品が制作され、夜にご飯が食べたくなるとの意味で「深夜テロ」なる造語まで生まれた“飯もの”。先見の明に感心していると、遠藤氏は「『孤独のグルメ』と比較されることが多いんですが、最初から“ご飯もの”にしようと思ったわけじゃないんです」と明かした。

 目指したのは原作の持つ「日本人の情緒や大衆の人間ドラマ」。料理はあくまでもスパイスであり、主食は人間模様だと語る。それも当たり前と言えば当たり前で、今でこそ確立されたジャンル“飯もの”だが、当時はその限りではない。

 「今は“飯もの”のくくりがあって、そこに向かって球を投げている作品もあるように感じます。『深夜食堂』に“飯もの”の意識はなくて、むしろ人情ドラマを描きたかったんです」

 09年にドラマの第1弾が終わると、日本での反響と同時に、それ以上の熱気が韓国や台湾、中国といったアジア圏から届いたという。公式には放送のない地域だ。

 なぜか?

 遠藤氏は「韓国や中国では違法配信で、日本での放送から2、3日あれば自国の字幕付き映像を見られるんですね」と解説する。

 決して好ましい状況ではないが、国外に「深夜食堂」の名が広まったのも事実。

 「すぐに韓国で『深夜食堂』そっくりの胃薬のCMが放送されて、13年にはミュージカルになりました。

 台湾では原作本が正規ルートで販売され、同じ版元の小学館では、それまで1番売れていた『名探偵コナン』の倍である6万部を記録しました。現地のNHKみたいな放送局がドラマの権利を買い取ってくれて、日本より認知度が高いくらいなんです」

 中国でも同様の人気ぶりという。韓国と台湾ではリメーク権が売れ、現在、両国ではドラマのリメークが進行している。遠藤氏はウケた理由を、こう分析する。

 「日本を含めアジア圏の人を引きつける魅力があるということだと思うんですが、どの国でも『ここがいい!』という部分が人によって結構違うんですよね。食べ物がいい、とか、雰囲気がいい、みたいに。やっぱり“ありそうでない世界”なんですね。ファンタジーなんだと思います」

 韓国や台湾などで、現地のスタッフに「『深夜食堂』に似たお店があるよ」と連れて行かれることもあるが、実際の雰囲気は作品の世界観とだいぶ違うことが多いという。

 違法配信で無料視聴されてしまうなら、と正式に売り込みをかけ、昨年10月期放送のドラマ第3弾は、日本と韓国、台湾で同時放送されている。時差や放送局の関係で数時間の誤差はあるが、海を越えて、ほぼ同時間帯にお茶の間に流れた。

 「タダで見ていたものを買ってもらったわけで画期的。そのお金は映画にも回っています」

 高度ネット社会がもたらした思わぬ海外人気。国は違えど、日本での人気と同様に誰もが頭に描く空想(ファンタジー)の『深夜食堂』があるのだろう。寡黙で聞き上手なマスターが待つ東京・新宿にある架空の食堂が、国境を越えて人をほっこりとさせている。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

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