森昌子 悩み抱えて歌ったデビュー曲

 歌手にとって、デビュー曲は、やはり思い入れが強いものだ。それぞれが、多くの思い出を持っている。

 歌手・森昌子(56)は、1972年7月1日に「せんせい」でデビューした。先生に初恋した女学生の、淡い恋が破れた心情をつづった楽曲。これが大ヒットし、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。翌73年の紅白歌合戦に初出場した際も、このデビュー曲を歌唱した。1期後にデビューした山口百恵、桜田淳子と「花の中三トリオ」と称されるアイドルスターに至る、自身を代表する曲だ。

 実は、この曲を歌うにあたり、大きな悩みがあったという。

 「どう歌っていいのか」-。デビュー時の昌子は13歳。初恋は、中学1年の時、バレー部の先輩にしたそうだが「先生に恋したこともないし、どうしていいのか」と思い悩んだ。そして、同曲を作曲した遠藤実氏に相談した。

 「昌子、ちゃんと芝居をしろ。目の前にステキな先生がいると思って歌え」。貴重なアドバイスをもらった。それでも、実は「戸惑いながら歌っていた」という。

 そんな中、意外な展開が訪れた。

 当時通っていた中学で、担任の先生が何を勘違いしたのか「森田(森の本名)、よく歌ってくれた」と感激してくれたという。その後は芸能活動で多忙な昌子を心配し、宿題などの配慮もしてくれたという。「いろいろ考えてくれましたね」と当時を懐かしそうに振り返った。

 森は「せんせい」でのデビューに続き「同級生」「中学三年生」と作詞・阿久悠氏、作曲・遠藤実氏のコンビで学園三部作をリリースした。これも森のデビューに際し、遠藤実氏が「この子にはどんな歌がいいか?」と考えた末、遠藤氏自身が手掛けた、歌手・舟木一夫のデビュー時の「高校三年生」、「修学旅行」「学園広場」との学園三部作の女性版として考えたプランだった。

 12月1日に営まれた作曲家・遠藤実氏、七回忌のしのぶ会。出席した昌子は、こんな遠藤氏との思い出をたくさん明かした。

 デビュー後も節目で多くのアドバイスをいただいた。森進一と離婚し06年に再デビューする際も「お前にはここしかない。あきらめるな」と大きな力になってくれた恩師。

 「本当にありがとうございました」。昌子は“せんせい”の遺影に、そっと手を合わせた。

 (デイリースポーツ 栗原 正史)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

コラム最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス