若手、コーチが脱帽する内村航平の強さ

 体操ニッポンの“エース”の地位は、いまだにわずかな揺らぎすら感じさせない。今月行われた体操全日本選手権で、ロンドン五輪を含め現在、世界大会5連覇中の内村航平(25)=コナミ=が史上初の7連覇を達成。個人総合連勝記録を28に伸ばした。

 個人総合では実に08年9月以来、約6年間負けなし。この大会でもまた底知れぬ強さを見せつけた。大会前には重度の貧血で体調を崩し、試合直前の練習で首、肩痛を発症。満身創痍の中での大会だった。首、肩に負担が掛かるつり輪後からは珍しく安定感を欠く演技が続き、跳馬では大きく着地を乱した。

 内村を追いかけたのは、期待の若手、野々村笙吾(順大)。つり輪、跳馬、平行棒と内村を上回る得点で猛追し、最終種目の鉄棒の前には1・3点差まで迫った。鉄棒でも野々村は完ぺきな演技で15・300点の高得点をたたき出し、内村に重圧を掛けた。しかし、ここで王者は真価を発揮。完ぺきな演技で応え、野々村を上回る15・650点で突き放し、試合を決めた。

 2位との差、1・650点は近年の内村にとっては、最も詰め寄られた結果だ。内村自身も「さすがに負けたかと思った。2人(2位の野々村と3位の加藤凌平)はやっかいな存在になってきた」と危機感を口にするが、内容にはまだまだ超えられない差を感じさせた。2位となった野々村笙吾(順大)は「正直なところまだまだ差はある。僕は万全で、内村さんはケガもしていた。その中であの点差ですから…。去年よりは近づいてきていると思うけど」と、ただただ脱帽していた。

 体操選手が競技生活のピークを迎えるのは、一般的に20代前半と言われる。定説に当てはめれば、過渡期を迎えているはずの内村だが、衰えは一切感じさせない。森泉コーチは「とにかくケガをしても回復が早い。他の選手の半分も掛からないかもしれない。医学的なことは分からないんですけど。まあ、世界のコーチや審判が『100年に1人の逸材』と言ってしまうような選手だから」と、その異次元ぶりを証言する。

 内村自身もいまだ自分の進化への手応えを感じている。7連覇を振り返り「確実に1年1年レベルアップできていると思う」と話した上で「ここから先が勝負になる。どう維持して、いいところをさらに伸ばしていくか」と、今後を見据えた。2年後の16年リオデジャネイロ五輪はもちろん、20年東京五輪ですら、内村は王者として君臨しているのではないか‐。そんな期待すら抱かずにはいられない。

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