公務員ランナー川内、正念場の夏へ

 日本のマラソン界に一石を投じてきた“最強市民ランナー”が、競技人生の分岐点となるであろう夏を迎える。

 9月に開幕する仁川アジア大会の代表に決定した公務員ランナーの川内優輝(27)=埼玉県庁=は、同大会で金メダルを獲得できなかった場合、世界選手権、五輪という日本代表戦線からの撤退を表明。退路を断って、真夏の大一番に臨む。

 最大の“理由”は、川内の天敵といえる暑さだ。川内は過去2回、世界選手権に出場。11年大邱大会、13年モスクワ大会とも18位に終わった。「5度を切ってくれるぐらいがいい」と、冬マラソンを得意とする川内。11年の惨敗後は、北海道マラソンなどにも参戦し、克服に向けて取り組んでいただけに、13年大会で同じ順位だったショックは隠せなかった。「結果的には2年前と同じ。力不足」。その後、夏レースからの“撤退”を示唆するようになった。

 この弱点について、メンタル面の問題を指摘する声もある。日本陸上連盟の酒井勝充強化副委員長は「川内くんは暑さに弱いと話しているが、そんなことはない。世界選手権の後も食事をたくさん食べていたし、内蔵が強い」という。

 4位に終わった3月のびわ湖毎日マラソンでは、レース前に晴れていく空を見て「嫌だな~と思った」と話していた。深層心理に植え付けられた苦手意識が、影響している可能性もある。

 これまでは市民ランナーとして培ってきた自らのノウハウだけで戦ってきたが、自分の殻を破るべく、川内自身、ランナーとして新たな取り組みを始めている。びわ湖毎日マラソン直後、フラフラになりながらも関係者に支えられながら、両手で口を覆い、ゆっくりと歩く川内の姿があった。

 これまではゴール直後に倒れ込み、医務室に運ばれていたが、「口を覆って、二酸化炭素を多く取り入れると呼吸が落ち着いてきて、回復が早いと陸連の方に聞いたので」と、ライバル視してきた実業団選手のやり方を取り入れ、さらなる進化を目指している。今月31日に陸連が発足させるナショナルチーム入りも内定。本格的な暑さ対策へ、陸連の医科学チームの見地も取り入れていく。

 一方で現在も16週連続でレースに参戦中と自らの調整スタイルは不変。日本代表としてさらなる高みを目指すのか、それともあくまで市民ランナーとして道を究めていくのか‐。持ち前の野生的な走りに、日本マラソン界が培ってきた英知を取り組み、公務員ランナー川内が勝負の夏に挑む。

(デイリースポーツ・大上謙吾)

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