さらに面白いラグビー日本選手権へ

 16日に開幕した第51回ラグビー日本選手権は、すべてトップリーグ対学生という組み合わせで1回戦4試合が行われた。いずれもトップリーグ勢が大学勢を下し、順当といえば順当な結果に終わったわけだが、東芝から4トライを奪った筑波大の健闘、さらに早大はかつてワセダを率いていた清宮克幸監督が指揮を執るヤマハ発動機にしぶとく食い下がり、同監督から「ナイスゲーム」というコメントを引き出してみせた。

 その一方で神戸製鋼‐慶大戦は100‐0という大差がついてしまい、99年の神戸製鋼‐明大戦の108‐0に次ぐ大量得点差のゲームとなってしまった。ご存じのようにラグビー日本選手権は第34回大会までは、大学王者対社会人王者で行われていた。しかし両者の実力差が開いてしまったことで大会開催の意義が問われるようになり、35回大会からは複数チーム参加によるトーナメント戦に変更され、現在まで若干システムを変えながら施行されてきた。

 今回はクラブチームの出場枠がなくなり、大学選手権のベスト4、トップリーグの上位4チームに加え、トップリーグ5~12位によるワイルドカードを勝ち抜いた2チーム(ヤマハ発動機、トヨタ自動車)の計10チームが出場している。ただ、以前から指摘されているように、リーグ戦のセカンドステージからプレーオフ及びワイルドカードを戦い続けるトップリーグ勢に対して、1月初めに大学選手権を終えて約1カ月間も公式戦から遠ざかる学生はゲーム勘という点で大きなハンディを背負う。

 ヤマハ発動機との試合後に早大の後藤禎和監督は「(メディア側から)やんわりと提言していただければ」と前置きしながらも、「日程、組み合わせなど日本選手権の在り方をもう少し考えれば、もっと面白いトーナメントになると思う」とコメント。試合間隔が空くことによるコンディション調整、特に「気持ちの持っていき方が難しかった」(後藤監督)とメンタル面でのマネジメントに苦慮したことをうかがわせた。

 大学選手権決勝でいったんピークをつくり、そこから対トップリーグに向けて切り替える作業は楽ではないはず。拮抗するゲームがひとつでも多く見られるように、なるだけ同条件で戦えるようなスケジュールになればベストなのだが…。

 そして帝京大のチャレンジに触れないわけにはいかないだろう。今季は“打倒トップリーグ”をテーマに掲げ、シーズン中でもトップリーグとの合同練習などを行い着々と目標達成へ力を蓄えてきた。堂々と大学選手権5連覇を達成して、トヨタ自動車との一戦に臨んだが13‐38とスコアだけ見れば完敗。岩出雅之監督は「いいプレーもあったが、この内容が現時点での我々の実力」と潔く敗戦を受け止めた。

 速いテンポの球出しからアタックを仕掛けて何度か決定機をつくったとはいえ、スクラム、ラインアウトなどのセットプレーでは強烈なプレッシャーを受けてしまい、ほとんど思うようなプレーをさせてもらえなかった。裏を返せばトヨタ自動車が帝京大のFWを警戒して、徹底的にセットプレーでつぶしにきたといえる。岩出監督も「トヨタさんは本気できてくれたと思う。それに対応できるレベルに持ってこれなかった指導者の責任」と、まだまだ足りない部分があることに言及した。

 ほぼ守勢に回る展開になりながらも、キャプテンのCTB中村亮土の奮闘や1年生SO松田力也の突破など随所に通用するところもあり、まったく歯が立たなかったというゲームではなかった。新主将に決まったSH流大(ながれ・ゆたか)は、「負けた悔しさをどうエネルギーに変えるか。困難はあると思うけど乗り越えていきたい」と打倒トップリーグへ改めて強い決意を示した。大学チームが社会人に勝ったのは06年の第43回大会で、早大が28‐24でトヨタ自動車を破ったのが最後。トップリーグにどこまで迫り、そして超えることができるか。意義ある再挑戦が、今から楽しみだ。

(デイリースポーツ・北島稔大)

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