【阪神タイガースの歴史的弱点】期限は

 膨れ面のマートンをなぜ御せぬ、と回りが騒ぐ。すると、まるで慌てふためくように、和田豊監督はスタメンから外す。2015年6月の戦線でそんなことがあった。世論に合わす和田豊の律儀さ。あんな状況の時は例えばGMとか球団の本部長あたりが前面に出て、マスコミ対応してやればいいものを、阪神の歴史はいつも、騒ぐメディアが悪い、うるさいフアンが悪い、と難ごとを人のせいにし、現場任せにしてきた。選手管理は監督だけの任務ではない。

 しかし、それにしてもマートンをなぜコントローールできないのだろう。確かによく働き、その貢献度はわかるが、だからといって途中交代などで神聖なダグアウトにつばを吐いたり、下品な言葉を使ったり。もし、むくれて走塁や守備で手抜きしているのなら、その場で即刻、GO HOMEとやればいいものを。そのあたりが以前の真弓明信や和田豊の、いっちゃあ悪いが、粛々と采配してりゃあいい、と妙に収まっている優しいリーダーの物足りないところである。

 しつこくいうが、フロントがどれだけ現場監督の苦悩を守ってやるか、気分よく指揮をとらせられるか、で解決できることは多いはずだが、肝心なところで逃げているような気がする。

 西武に根本陸夫というできるGMがいたが、あの人を天国から呼び戻し、阪神の弱点にメスを入れてほしいものや、と真面目な顔をしていう阪神OBがいる。しかりである。

 球界に「外国人選手の賞味期限は3年」という言葉がある。助っ人はいくら役に立っても3年で契約を切るのが鉄則という言葉である。最初は日本の野球を学び、勝利のためにガンバリマスと殊勝な彼らも、じわじわとあぐらをかく。高額契約は選手の権利だから幾ら交渉してもこっちに関係はないが、段々と怪我をしないような無難なプレーを、バレないように始める。むろん、それが生きる道でもあるのだろうが、だからその前に3年で見切りをつける。3年くらいが日本の野球にもなれ、働き盛りになるが、反面、相手からは短所も見つけられ、対応される時期でもある。ともあれ、全力で汗をかかずプレーをしだしたら、おさらばでいい。

 笑い話がある。もう20年もそれ以上前の阪神の助っ人の話で。シーズンがあと20試合くらいで終わろうかという秋口に球団は野手を獲った。優勝争いでもしていて、緊急補強というような理由があればだれも首をかしげないのだが、下位をうろうろ、だれがみても意味のない補強である。

 どないしましてん?と球団幹部にこっそりと聞く。と…。

 「Bクラスで暗い毎日やがな。一発、話題を作らんとあんたら(記者)や世間(フアン)がうるさいもんな」

 聞いて正直に答えてくれる幹部をコケにしてすまないことだが、笑うしかなかった。これにはまだ続きがあって。神戸のマンションに、その助っ人を訪ねると杖をついて現れた。怪我してるんか?YES。なんで来たんやね?来るだけでいいからと言われた。案の定、翌年は姿を見せなかった。あの日の取材は笑った、わらったなあ。(敬称略)

(元デイリースポーツ・平井隆司)

 ◆平井 隆司(ひらい・たかし) 大阪府出身。旅行会社に就職するも4年で退社し、デイリースポーツに入社した。阪神タイガースの番記者として数々の事件・騒動を取材。その後、デイリースポーツ編集局長やサンテレビ常務など神戸新聞グループの主要なポストを歴任した。肩書が変わっても、阪神取材への情熱は冷めることはなかった。「伝説のトラ番記者」と呼ばれる所以である。

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