ノア斎藤 天国の三沢さんへ鎮魂

 「ノア」(13日、広島グリーンアリーナ小アリーナ)

 リング禍で死去したプロレスラー・三沢光晴さん(享年46)の七回忌命日に、生涯最終試合を行った広島グリーンアリーナ(小アリーナ)でメモリアル大会が開催された。6年前、三沢さんと対戦し、最後にバックドロップを放った斎藤彰俊(49)はセミファイナルに出場。三沢さんの遺影が見つめる中、バックドロップをGHCヘビー級王者の鈴木みのる(46)に放ち、追悼セレモニーでは涙を流した。

 あふれる思いをこらえることができなかった。追悼セレモニーでの10カウントゴング後、三沢さんがコールされ、入場テーマ曲「スパルタンX」が流れる中、天を見上げる斎藤の両目から涙がこぼれ落ちた。

 節目の七回忌。三沢さんの遺影が見つめる中、今の自分をぶつけた。結果的に三沢さんが“最後”に受けたバックドロップを鈴木に放った。1度退団後、昨年の6月13日にノアに復帰した斎藤は「いま一番倒さなければいけない相手。出すべきだと思った」と断言した。三沢さんが創設したノアの一員として、至宝ベルトを保持する鈴木撃破へ、あえて繰り出した。斎藤の覚悟を感じた超満員の観衆から温かい声援が起こった。

 6年前のこの日から、重い十字架を背負ってきた。同日午後10時10分に三沢さんが死去。翌14日も福岡大会を控えていた斎藤は、迷った挙げ句、翌朝に広島市内の川を見つめながら出場を決断した。「自分がいなくなれば、怒りをどこにぶつけていいか分からないだろうと」。ファンに刺されることも覚悟していたという。

 “事件”の約1カ月後、生前の三沢さんが『リングで自身に何かあったときに』と知人に託したメッセージを受け取った。「避けられない運命もある」。現役続行は間違っていなかったと確信した。

 この日、ノア所属選手は手首に緑のリストバンドを装着した。「この会場にノアの一員として上がれたのは、続けて良かったなと思う。戻ったからには役に立てるように」

 事件後、毎朝、天国に向かってお経を唱えることが日課だ。「6月13日が来ると初心に戻る。三沢社長はまだまだやりたいことがあっただろうなと。背負ってきた十字架は、体に刻み込んで精進したい」。斎藤はこれからも三沢さんの思いを胸に、リングに上がり続ける。

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