ラジオなのに“ゆるキャラ戦略”の狙い

 ラジオ局の文化放送がゆるキャラを活用して認知度向上を狙っている。昨年12月にスタートしたワイドFM(FMの電波を用いたAMの補完放送。AMが入りにくい場所や地域でも放送が聞きやすいのが特徴)のPRキャラクターに「キューイチロー」なる九官鳥をモデルにしたキャラクターを投入。さらに、「くまモン」がグランプリを獲得したことでも知られる「ゆるキャラグランプリ」にもエントリーしてしまった。この挑戦の狙いはどこにあるのだろうか。

 「キューイチロー」の名前の由来はワイドFMの周波数91・6MHz(メガヘルツ)にちなんだもので、誕生日は9月16日。身長は191・6センチで体は91・6キロ。ゆるキャラの王道とも言えるプロフィルの語呂合わせを徹底している。「文化放送の地下倉庫に置かれていた九官鳥型ラジオ。文化放送がFMラジオでも聴ける事になり、彼に魂が宿り、歩き、喋れるようになった」という経緯もしっかりしている。

 本来、ラジオの本分は音のコンテンツ。その中で視覚に訴えるキャラクター戦略に打って出た理由は何か。同局の広報担当は「ホームページやSNS、イベントなどビジュアル媒体とラジオのメディアミックスが当たり前になってきているからです」と説明する。キューイチローの活動は意外なほど地道で、同局関連のイベントのほか、AMの電波が入りにくく文化放送の認知度が低いと考えられる地域を訪問しアピールしていくという“草の根戦略”をとっている。

 キューイチローの公式ブログをのぞいてみると、埼玉県の蕨市や川口市、神奈川県川崎市の溝の口など、東京近郊のさまざまな場所に顔を出している。「ゆるキャラがいるだけで、女性やお子さまが近寄ってきてくれます」と担当者が語るように、ブログにアップされた写真には若年層と撮影したものが多い。AMラジオは比較的男性に人気があるため、女性や子どもの興味を引けるのは新鮮で、価値があることなのだという。

 ラジオ業界には今、一つポジティブな話題がある。聴取率のうち、調査対象が放送局を問わず、どれぐらいの割合でラジオをつけているかを示す「セッツ・イン・ユース」がワイドFMがサービスを開始した昨年12月から上昇傾向にあるのだ。2カ月に1度行われる調査で昨年12月と今年2月が6・5%。4月が6・8%とラジオに触れる人の数は増えている。ただ、文化放送はこのパイの増加を聴取率的に「生かし切れていない」(三木明博社長)といい、文化放送の周波数が「91・6MHz」であることや、局の存在そのものの認知度向上が急務となっている。

 キューイチローのプロジェクトはその対策の一つだ。広報担当者によると、キューイチロー自身はワイドFMのPRにとどまらず、文化放送全体のPRキャラに就任しようと画策しているというが、それも「ゆるキャラグランプリ」などでの活躍次第。広報担当者は「まずは投票締め切り日となる10月24日18時まで、参院選・都知事選の候補者以上に、本気で選挙活動に集中します」と力を込めた。目で見て、触ってもらってPRするラジオのゆるキャラ「キューイチロー」。そのゆるいルックス以上に全力で奮闘している。

 (聴取率はビデオリサーチ社調べ、首都圏の調査)

 (デイリースポーツ・広川 継)

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