中村獅童の主演舞台、口コミで評判

 京都南座9月花形歌舞伎「あらしのよるに」が残り1週間あまりとなった。原作は350万部を超える大ベストセラーとなった同名の絵本。現代絵本作家の作品が歌舞伎の題材として取り上げられるのは史上初。絵本の世界観と歌舞伎が見事に融合し、口コミで評判を呼び、大入りが続いている。

 オオカミとヤギの友情を描き、他の出演も森の動物と、人間は出てこない。当初は不安視する声もあったが、幕を開けてからはそれらを一掃した。

 主人公のオオカミ“がぶ”役は中村獅童。02年にNHKのEテレの番組でこの本に出会い、05年に公開された映画でも、がぶの声を担当した。まさにハマリ役で、今回も縦横無尽に舞台狭しと活躍している。

 新作歌舞伎、原作は現代童話…と、ともすれば従来の歌舞伎ファンには敬遠されがち。だが大敵を登場させたり、狐忠信を彷彿とさせる動きや衣装など、舞踊や仕草など、大枠はオーソドックスな歌舞伎の作りになっている。

 だが古典を意識した作りにもかかわらず、現代的なシャープさを持つ獅童の個性と役作りが絶妙なラインで古典と新作を融合させた。ともすれば獅童の現代っぽさがオーバーになりそうなときには、かぶの友人であるヤギの“めい”役の尾上松也をはじめ、“みい姫”役の中村梅枝、“たぷ”役の中村萬太郎、そして敵役であるオオカミの“ぎろ”の市川月乃助らが古典的な作りで混ざり合い、見事なハーモニーを見せた。

 狐忠信など、異形の登場人物を演じることもある歌舞伎。今回も着ぐるみ姿ではなくとも、オオカミとヤギであることが観客にはしっかりとわかる。もちろん新作ということで、出演者も舞台稽古まで試行錯誤を続けてきた。

 今後、再演を重ねてもよい出来映え。原作ファン、歌舞伎ファン、子どもから大人まで楽しめる作品になっている。獅童も「どうかお子さんも一緒に、家族でご覧になっていただきたい」と呼び掛けている。

 京都南座で26日まで。

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