大阪国税局 具体的課税ケースを説明

 競馬の的中馬券の配当金への課税で、外れ馬券購入費が必要経費と認められるかが争点となった刑事裁判。23日の大阪地裁判決は、約3年間で、28億7千万円分の馬券を購入し、払戻金30億1千万円を得ていた元会社員の購入方法があまりに高度かつ特殊だったため“特例”として、外れ馬券購入費の必要経費参入を認める判断が示された。

 一見、競馬ファンが沸き上がりそうな司法判断。だが、被告弁護人の中村和洋弁護士は判決を高評価しつつ「この判決でただちに、一般の競馬ファンの外れ馬券代が必要経費になるものではない」と指摘した。

 大阪国税局に、現状の見解や具体的な課税ケースを聞いた。

 ‐一般的な会社員に確定申告の義務が発生するのは?

 「会社からの給与以外に年間で20万円を超える収入がある場合です」

 ‐競馬収入の場合は90万円を超える額、となるようだが。

 「一時所得である競馬配当金の場合は、税法に沿った計算式で『(競馬での収入-特別控除額50万円)÷2』の額が20万円を超えた場合に確定申告の義務が発生。逆算すると競馬収入が90万円を超える額となります」

 ‐90万円は競馬収支の黒字という意味か。

 「1年間の当たり馬券配当の総額から、当たり馬券の購入費用の総額を引いた額です。仮に1年間に購入した馬券が1レースの1点買いだけで、100万円で購入して200万円の配当があった。これは100万円のプラスで、90万円を超えているので確定申告の義務があります」

 ‐1年間を1レースに置き換えて聞く。馬番連勝(1)‐(2)(3)(4)(5)の4点を各100万円、合計400万円で購入。(1)‐(2)が的中して200万円の配当があった。この場合は、収支はマイナス200万円だが?

 「(1)‐(2)の配当金200万円から(1)‐(2)の購入費用100万円だけを引いて、100万円の収入とみなされます」

 ‐外れた(1)‐(3)(4)(5)の購入費用である計300万円は?

 「必要経費とはみなされません」

 ‐現実的には、1点あたりの購入額は百円~1万円程度が一般的。ただし、毎週末に競馬を楽しんでいれば、年間収支がマイナスでも、当たり馬券だけの年間90万円は現実的なラインだ。

 「少額で大量に買った場合も、考え方は、先ほどと同じです」

 1年間の競馬収支が大赤字でも納税義務が発生するケースがあるとの国税当局の見解が世間を驚かせた今回の刑事裁判。結局、一般的な競馬ファンの“救済”までは至らなかった。

 中村弁護士は個人的見解として「競馬の配当金を非課税にするなど、誰もがすっきりできるシステム作りが必要では。今回判決がその一歩になれば」と話した。

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