格好いい人生、和歌山で画家・泉茂の展覧会

20世紀後半の関西を代表する画家・版画家のひとり、泉茂(1922~1995)。彼の画業を展観する回顧展が、3月26日まで「和歌山県立近代美術館」(和歌山市吹上)で開催されています。

長いキャリアのなかで、彼の作風は何度も変化しています。初期の作品は抒情的で、「鳥」のモチーフが有名でした。やがて画面は抽象化し、「線」をテーマにした作品が登場。その後、点と線と幾何学形態を組み合わせたシリーズや、エアブラシを用いて金属的な質感を表現したシリーズなどが生まれ、晩年は「雲形定規」をモチーフにしたカラフルで華麗な世界にいたりました。

しかし、作風の変化イコール、過去との断絶ではありません。新旧のシリーズには必ず接点があり、画面のなかに共通する形態や要素が潜んでいます。特に雲形定規のシリーズには、トランプのマーク(スペード、ハート、クラブ、ダイヤ)、幾何学形態、点、線など過去の作品で用いられた要素がふんだんに盛り込まれており、キャリアの締めくくりにふさわしい集大成的な表現が見られるのです。

ある作風で評価を確立したら、意識的にテーマや制作方法を変え、自身への挑戦を繰り返す。しかし最終的には、それら全てが1本の線として繋がっている。そんな生き方ができる人は滅多にいません。本展のタイトルにある「ハンサムな絵のつくりかた」には、作品だけでなく泉の人生への賞賛も込められているのでしょう。約170点の作品と関連資料で一人の芸術家の軌跡を追体験できる優れた展覧会です。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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