小吹隆文撰・おでかけアート、5/18~
「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、戦後の日本美術と、作家自身を作品に仕立てた2人のアーティストを紹介します。
戦中戦後をテーマにした硬派な企画
『1945年±5年 激動と復興の時代 時代を生きぬいた作品 』
@兵庫県立美術館(神戸市中央区)
日中戦争、太平洋戦争、敗戦、連合軍の占領統治など、日本近代史の中でも最も激動の時代と言える1940年から50年に焦点を合わせた展覧会が行われます。
会場には、岡本太郎、小磯良平、東山魁夷、松本竣介、丸木伊里、吉原治良など、当時の錚々たる美術家の作品が並ぶほか、藤田嗣治の初期の戦争画《シンガポール最後の日(ブキ・テマ高地》の出品、シベリア・シリーズで有名な香月泰男が満州から家族に送った軍事郵便20点、漫画家の水木しげるが捕虜時代に鉛筆で描いた素描5点など、約70名の作家による約200作品を展覧。時代の大渦に巻き込まれた美術家たちがどのように活動し、戦後日本美術を立ち上げていったのかを、幅広い視点から考察します。
2016年5月21日(土)~7月3日(日)
アートと映像、10年の歩みを検証
『「松谷」と“MATSUTANI”のあいだ 松谷武判 映像化プロジェクトの10年 藤原次郎と奥村美恵子の試みと挑戦』
@アートスペース感(京都市北区)
パリを拠点に国際的に活躍する美術家・松谷武判(1937~)。本展は彼をテーマにした、アートと映像の展覧会です。
新しい映像表現の可能性を探る藤原次郎と奥村恵美子(RaRa Project)は、2005年秋に京都の「アートスペース感」で松谷の作品と出合い、深く感銘を受けると同時に「撮ってみたい」と直感しました。以来、10年にわたり松谷の歩みを撮り続け、モントリオールとニューヨークで上映会を行うなど、そのプロジェクトは広がり続けています。その原点である「アートスペース感」で開催の本展では、作品展示、新旧の映像上映、新作映像インスタレーション、パネル展示、資料展示などが行われます。特に5月19日と22日のイベントは見逃せません。
2016年5月18日(水)~29日(日)
愛すべき妄想系アーティストの回顧展
『木内貴史展 「木内妄想芸術大学作品展-独りホームカミング-」』
@成安造形大学【キャンパスが美術館】(滋賀県大津市)
1998年に成安造形大学を卒業して以来、関西を中心に活動している木内貴史。
彼を一言で説明すると「社会や美術の制度・慣習をアイロニカルに批評するアーティスト」です。ただし、決してクールでスマートな作家ではありません。作品にはベタな駄洒落、野暮ったさ、自虐ネタがふんだんに盛り込まれており、観客はトホホな気持ちで作品に突っ込みを入れながら、いつの間にか作家の術中にはまってくのです。また、いくら斜に構えても対象への思い入れが隠せない優しさも彼の特徴です。本展では、木内の妄想が作り出した芸術大学の作品展という設定の下、これまでの代表作が集結します。その類稀な芸術世界(=キウチズム)を概観する絶好の機会です。
2016年5月23日(月)~6月25日(土)
(Lmaga.jp)
