宇部鴻城熱血マネジャーの夢は「寮母」

 「高校野球・3回戦、東海大甲府3-2宇部鴻城」(19日、甲子園)

 宇部鴻城3年・野室千尋記録員は丁寧に記した。九回2死。主将・西野、二塁ゴロ‐。いつも通りにスコアブックを埋めると、野室の目に涙があふれた。「座っているだけでは気持ちは伝わらない」。昨夏に決めた自分との約束。80試合以上、鉛筆を握りベンチで立ち続けた。

 甲子園に行きたかった。父・博幸さん(52)はPL学園時代に捕手でチームは甲子園2回出場。ベンチ入りはできなかったが、娘にとってはあこがれだった。でも自分は女、選手での出場はできない。だからマネジャーになった。

 昨夏までは1学年上の先輩2人がいた。昨秋の新チーム発足とともに野室1人になった。145センチの体で獅子奮迅。午前7時には部に出向き掃除を済ます。授業を終え練習。夜は寮生のために家庭用炊飯ジャー5器分の米をせっせと研いだ。“もしドラ”を繰り返し読み「わたしが甲子園に連れて行く」と決意した。

 今年5月。結果の出ないナインを叱咤(しった)した。「つらい練習だって言うけど、わたしにはそう見えない。最後に手を抜いてどうするの」。主将・西野の顔色が変わった。「お前に何が分かる」。勝ちたかった。だから本気でぶつかった。翌日、「ラスト1本!」と声を張り上げる西野がいた。

 夏が終わった。帽子で顔を隠す野室に、西野は最後に打ったボールを手渡した。将来は母校の寮母を目指す。「わたし、おかみさんになりたいんです」。真っ赤な顔で、照れくさそうに笑った。

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