凱旋門賞からいよいよ海外馬券発売 情に流されず◎を打ち込めるか

 海外レースの馬券発売が今年の凱旋門賞(10月2日、シャンティ)からスタートする。日本馬の馬券を握りしめながら(インターネットのみ購入可能ですが…)応援するというファンの待ちわびた瞬間は、すぐそこに迫ってきた。一方で気になるのは競馬記者が予想においてどのようなスタンスを取るか、という点である。

 インターネットの普及によって過去のレースや調教動画の閲覧が容易になり、今は新聞に掲載できない細部の情報までファンが入手できる時代。ただこれはあくまで中央競馬に限ってのこと。海外競馬の情報量は圧倒的に少なく、精通したファン以外はスポーツ新聞の予想や記事に頼る側面が非常に大きいだろう。うぬぼれではなく、我々の打ち込む印はオッズに相当な影響を与えるのではと推測される。

 これまでの海外レースでも、ドバイ諸競走や凱旋門賞などは各スポーツ新聞に現地取材記者の予想が記されてきた。そしてほぼ例外なく、日本馬に◎が打ち込まれていたように思う。かくいう記者も14年凱旋門賞では、ゴールドシップ(14着)に◎を託している。記者も人間。ともに遠征し、調整が難しい異国での努力を間近で見届けたのだから、応援込みで◎を打つのは自然な流れだろう。仮に勝算は決して高くないと感じていても、だ。

 ただ今年の凱旋門賞からは様相が異なる。前述した通り、我々の印が大きな影響力を持つ以上、馬券的に最も魅力を感じる馬に◎を打たねばならない。それが日本の関係者から失礼に思われようとも、海外馬を推奨するケースは多くなってしかるべき。時には日本馬がヌケ(無印)になるかもしれない。

 11日のニエル賞ではマカヒキが順当勝ち。頭数は5頭立てでメンバー的には近年まれに見る低レベルな組み合わせだった。本番は相手がグンと強化される。欧州最強馬のポストポンド、地元フランスの牝馬2冠馬で8戦無敗のラクレッソニエールが2強。さらに超豪華メンバーの愛チャンピオンSを強烈な末脚で制した仏ダービー馬アルマンゾルも、参戦すれば文句なしに有力候補だ。同レースで敗れたとはいえ、英愛ダービー馬ハーザンドやG1・6勝の英オークス馬マインディングもVを狙える位置にいる。

 日本史上最強クラスの06年ディープインパクト(3位入線→失格)、12、13年オルフェーヴル(2着)ですら勝ち切れなかった凱旋門賞。遠征2戦目のプラスアルファを見込んでも、マカヒキにとって容易な戦いではないというのが記者のジャッジ。仮に紙面上で印を打つ機会を与えられたなら、私はマカヒキに◎を打たないつもりである。読者が印を参考に馬券を購入する以上、やはり責任を持って冷静沈着な予想を心掛けたい。

 現場で取材する記者は常にジレンマを抱えている。普段から接点の多い騎手や厩舎には情が入り、応援込みで印を打った経験は誰もが持っているに違いない。ただ本来、これは予想家として失格。それもきっと誰もが分かっていることだろう。我々が見るべき方向は読者。新聞を購入し、各記者の予想を見ながら大事な身銭を切る読者なのだ。

 果たして各スポーツ新聞にはどのような印が並ぶのか。海外馬券発売以前と同様、マカヒキに◎がズラリと並ぶのか。それとも散らばるのか。ファンの心情馬券代が間違いなく影響するJRAのオッズはさておき(恐らくマカヒキは1番人気だろう)、新聞上の印はブックメーカーのオッズと大きなズレがないべきだと考えている(12日朝の時点で英ウイリアムヒル社はマカヒキが4番人気)。それが参考資料としては最も望ましい形。記念すべき海外馬券発売レースの第1弾は競馬記者の姿勢、並びに新聞の信用性が問われる重要なレースでもある。

 ちなみに現時点で記者の◎は愛チャンピオンS2着の堅実派ファウンド。昨年はスムーズさを欠いて9着だが、その後は着実に成長。日本における知名度のなさから間違いなくオッズ的な妙味があるだけに、馬券としては“買い”だろう。(デイリースポーツ・豊島俊介)

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