【有馬記念】アクター4連勝でGP制覇

 「有馬記念・G1」(27日、中山)

 ゴールドはゴールドでも、勝ったのは“アクター”だった。今回が引退レースの1番人気ゴールドシップが最後方から大外まくりを打ち場内が大歓声に沸くなか、好位でジッと我慢を利かせた吉田隼騎乗の8番人気ゴールドアクターが直線で力強く抜け出し、2着馬の強襲を首差しのいでV。4連勝で人馬ともにG1初制覇を飾った。2016年は堂々の主役として、競馬界を引っ張っていく。

 年末の大一番で、遅れてきた大器が12万人の観客を前に主役を演じ切った。ゴールドアクターが破竹の4連勝でグランプリ戴冠を果たし、歴戦の強豪を撃破。G1初制覇で世代交代を印象付けた。

 「自分がこの馬に一番うまく乗れる自信があった」。これまでコンビを組み7戦6勝、3着1回の吉田隼は抜群のスタートを決め、3番手のインへ導く。道中で折り合いをしっかりつけ、抜群の手応えのまま直線へ。残り100メートルで抜け出すと、迫る2着サウンズオブアースの追撃も完璧に抑え込んでみせた。

 馬上で左手を上げてNo.1ポーズを決め、吉田隼は人馬ともに初G1制覇を決めた喜びを爆発させる。「G1ジョッキーになりたいと思って、この業界に入ってきた。ここまでくじけずにやってきて良かった」。デビュー12年目の32歳は喜びをかみしめた。

 11月29日の東京競馬場で馬に蹴られるアクシデントに見舞われ、右膝蓋骨を亀裂骨折。3週後に迫った大一番への騎乗も危ぶまれる事態に陥った。「ここで乗り代わりになったら一生後悔する。今後、足が動かなくなっても乗りたかった」と騎乗を志願。痛み止めの注射を打ち、今週から戦列に復帰した。

 「今はすぐに外国人騎手に乗り代わりになってしまう時代。信頼関係があったからこそ、この結果につながったんだ、と言いたい。若い子に元気を与えられたと思う」と力強く言い切った。

 開業10年目でのうれしいG1初勝利となった中川師は「まだ正直実感が湧きません」と感無量の様子。主戦の完璧なエスコートに「彼ならこの馬のいいところを引き出してくれると思っていました」と信頼を口にした。「この馬は今後もさらに強くなる。大切に使っていきたいですね」と、天皇賞・春(5月1日・京都)が目標となる来年へ目を向ける。

 最高のパートナーを背に“名優”は本格化を迎えた。今度は追う立場から追われる立場へ。それでも、一度つかんだ主役の座は譲らない。

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