“表現者”瀧本美織 初挑戦ミュージカルにハマってます!五輪に刺激受け熱い舞台を

 この夏はミュージカル『狸御殿』に全力を注ぐ瀧本美織(撮影・園田高夫)
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 女優の瀧本美織(24)が、上演中の「狸御殿」(東京・新橋演舞場、27日まで)でミュージカルに初挑戦中だ。踊り、演技、歌…と、これまでの活動を詰め込んだかのような作品だが「集大成という感じでもなく、別物」と奮闘している。リオ五輪と重なる夏公演。地球の裏側の激闘に負けじと熱演する“狸の国の姫”に意気込みを聞いた。

 ◇   ◇

 瀧本が稽古初日に大泣きしたことが、演出する宮本亜門氏(58)の格好のネタになっている。演じるのは、狸の国で継母やその娘たちに意地悪をされながら暮らす、きぬた。つらい日々を堪え忍んでいたある日、森を訪れた狸御殿の若君・狸吉郎(尾上松也)に一目ぼれされ…と、わかりやすく言えば“狸版シンデレラ”なわけだが、いびられるシーンで「感情が入りすぎてしまった」という。

 「いじめられて、いじめられて、いじめ抜かれて、よく転ぶ…みたいなかわいそうな境遇の役。お父さんも死んでしまっていて『おとっつぁん!!』と叫ぶところで、ぐっときてしまった。(本番は1カ月あるので)メンタルを強く持ちたいと思います」と照れ笑い。やがて若君と結ばれ、狸御殿の姫となる、きぬたの成長と変化を伸びやかに演じている。

 作品のもとになったのは、1939年に始まったオペレッタ(ミュージカル)喜劇の映画シリーズ。それを96年に宮本氏が舞台化し、市川染五郎(43)が狸吉郎、牧瀬里穂(44)がきぬたを演じて好評を博した。

 今回が20年ぶりの再演で、瀧本は初演当時4歳。「(初演を)引きで撮った定点カメラの映像を見せてもらったんですが、亜門さんは新しい『狸御殿』を作ろう、って感じでした」と、あえて意識をしていない。製作陣も新曲を5曲追加するなど、新作公演の意気込みだ。

 11歳のころ、ボーカル&ダンスユニット「SweetS」のメンバーとしてデビュー。TRFのSAM(54)からレッスンを受けた。今でもトレーニングは、ジムではなくダンススタジオ。「動いてるときが一番生き生きしている」と語る体育会系だ。

 女優デビューは2010年、18歳の時だった。映画「彼岸島」で運動センスを生かしてアクションに挑戦。同年2月にNHK連続テレビ小説「てっぱん」のヒロインに抜てきされてブレークした。

 好感度抜群の癒やし系笑顔と、ダンスとともに磨いてきた表現力が武器。日本テレビ系「アナザースカイ」のMCやガールズバンド「LAGOON」のボーカルなど、マルチな活動でジャンルを越境してきた。

 ダンス、歌、演技…すべての要素が結実したかのようなミュージカルは集大成と呼べるのでは?

 その質問の答えは「NO」。勝手が違うという。

 「ミュージカルの歌い方はJ-POPとは違いがあるなと実感しました。(今回は)童謡に近いんですかね。発声の仕方から違う。息を出さずに、声をずっと張っている。J-POPではブレスだったり、息の多さもニュアンスとして入ってくるので。踊りも日本舞踊。別物に新しく挑戦している感じです」

 それでも芸歴10年以上の経験は、頼もしい土台。劇中にはフライングの演出が何度かあり「一番最初の映画(『彼岸島』)からつるされていたので、『任せろい!!』と言いたい。股が痛いですけど」と軽やかに笑った。

 主演の尾上は歌舞伎界のプリンス。共演に元ボクサーの赤井英和(56)、落語家の柳家花緑(45)、お笑い畑の青木さやか(43)と演劇ネーティブではない面々が顔をそろえ、おのおのの魅力が化学反応する「狸御殿」は、いい意味で“狸の化かし合い”だ。

 「役者」であると同時に別の顔を持つ「表現者」なのは瀧本も同じ。ちょっぴり天然な素顔が本番で一変するように、少しだけ表情を引き締めて「表現論」を語ってくれた。

 「歌だったり、ダンスだったり、お芝居だったり、MCだったり、自分で線引きしてるわけじゃないんです。そこにフラットで入っていって、現場にスイッチを入れてもらう。表現するって意味では一緒と自分では考えているので、その表現という中でのミュージカル。歌あり、踊りあり、芝居ありと、いろんな要素が詰まっているので挑戦ですけど、新しいものを見せられると思ってます」

 ミュージカルは、出演者全員による和製楽器の演奏からサンバに転じて終了する。日本からリオへ。五輪にエールを届けるかのような構成だ。公演チラシにも「この夏!リオではオリンピック!!東京では狸祭り!!」の文字が。時差的に競合しないこともあるが、演出的に意識しているのは確かだろう。

 「日本とブラジルが融合される感じですかね。国境は関係ないんだ、って。世界は一つだ、という壮大なテーマです」と分析。公演中もしっかり五輪中継を見ていくつもりで「舞台に立つ精神やメンタルは、試合をする選手と一緒のところもあると思う。どっしりしていきたいですね」と刺激を受けている。

 1日に迎えた初日から客席の反応も上々。「温かい拍手や声援で気持ちが高揚し、感謝の気持ちで胸がいっぱいです。やはりお客さまあって成立するものなのだなと実感してます。千秋楽まで、新鮮な気持ちと楽しむ心を持って駆け抜けたいと思います!」。すっかりステージの魅力に取りつかれている。

 ◆瀧本美織(たきもと・みおり)1991年10月16日生まれ。鳥取県出身。2003年に「SweetS」のメンバーとしてデビュー。10年に朝ドラ「てっぱん」のヒロインを務め、お茶の間に浸透。13年にはジブリ映画「風立ちぬ」で声優に初挑戦した。14年にガールズバンド「LAGOON」の活動がスタート(今年7月に解散)。「狸御殿」は、14年11月のV6・森田剛主演「ブエノスアイレス午前零時」に続く舞台2作目で、ミュージカルとしては初。身長162センチ、0型。

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